2023.10.10

Speeeの採⽤戦略とは 〜失敗から⽣まれたカルチャーが強い組織を作る〜

株式会社Speee
大塚 英樹 氏

会社情報

「解き尽くす。未来を引きよせる。」というミッションを掲げ、さまざまな事業開発を続ける株式会社Speee。2007年にモバイル検索による集客コンサルティング事業からスタートし、創業時3名だった従業員数は現在400名まで増えた。CEO 大塚英樹氏に創業時からの採用の変遷、組織づくりへの想い、HRの体制などについて語っていただいた。

危機からの強い組織づくりへ、Speee採用の変遷

現在、非正規も含め約400人が働くSpeee。2007年の創業以来、どのようにメンバー集めを行ってきたのだろうか。またSpeeeが掲げる「15のカルチャー」が生まれたきっかけには、2期目に起きた組織崩壊があったという。失敗を糧に、強い組織づくりに取り組んできたSpeeeのストーリーを伺った。

ー 創業時、メンバー集めはどのように行っていましたか。

大塚氏:
2008年リーマンショックの前年、2007年11月に創業しました。今とはスタートアップの状況も全く違う時代ですし、創業してすぐに景気が悪くなってきて、人集めも苦戦しました。
創業時は3人。すぐに5人までは増えたのですが、僕らはリファラル採用がまったくできませんでした。ベンチャーの場合、役員の知り合いなどから信頼あるチームを作っていく傾向がありますが、僕らは学生起業ということもあり、社会人の知人・友人はいなかったんです。

そこで、比較的すぐに求人媒体に掲載しました。また、エンジニアが欲しくて、プログラミングスクールで応募をかけたら、そこの講師の先生が応募してきたり(笑)。1年目の終わりになんとか15名くらいまでは増えていました。
ところが、2年目に入って、3分の1が一気に辞めてしまうという事件が起きるんですよ。僕らは「2期目の2月危機」と呼んでいます。

この時にあらためて、組織づくりというものを本格的にやらなくてはいけないと痛感する。僕らの今につながってくる、象徴的な出来事です。

ー 2月危機の原因は、何だったのでしょうか?

大塚氏:
僕らは経営に関しては勉強してきた自覚があったので、コミュニケーションが希薄化すると組織がどうなるかは、ある程度イメージしていました。
そこで、コミュニケーションの時間はとるように心がけていました。私や久田(SpeeeのFounder)は、売上を作るためにほとんど外出していたのですが、外出前や夜みんなが帰る前にはオフィスに戻り、なるべく話をするようにしていたんです。
それでも問題は起きてしまった。解決方法と思わしきものを仮説に基づいてやっていたものの、それは本当の解決方法じゃなかったんですね。
この時は、ショックで食事が喉を通らなくなりました。もちろん要因はいろいろあったわけですが、とにかくこれは自分たちのせいだと反省しましたね。
そこでもう一度立て直して、強い組織を目指すために「Speeeカルチャー」というものを作ったんです。

  1. 組織成長への貢献
  2. 本質の見極め
  3. スピード&クオリティ
  4. プラステクノロジー
  5. 他部署への尊重・感謝
  6. 期待+α
  7. 脱受け身
  8. 他責の否定
  9. 法令とモラルの順守
  10. Excusion
  11. 創造のための効率化
  12. 変化を楽しむ
  13. 素直・謙虚・率直
  14. 迅速なリスク対応
  15. 知的好奇心の探求

15もあるので、もっとシンプルにしたほうがいいとは思うんですよ(笑)。でも、気持ちがこもっているので、どの項目も簡単には消せないんです。今も大事にしているカルチャーです。

ー 失敗を乗り越え、従業員の採用はすぐに軌道に乗ったのですか?

大塚氏:
いえ、採用にあまり予算をかけられない状況は続いていたので、エージェントは使えず、基本的には媒体に掲載していました。
「Find Job!(ファインドジョブ)」という媒体が僕たちの生命線で、ここから送るメッセージに自分たちの魂を込めていましたね。

でも、面接をセッティングしても当日になると来ないんですよ。これは後からわかったことなんですけど、当時は雑居ビルに入っていたので、それを見て応募者の方たちは帰っていたんでしょうね。六本木に移転したらみんな面接に来てくれるようになったので(笑)。あとはイーキャリアにも掲載していました。最初のミドル層は媒体を使ってけっこう採用が進んだと思います。エージェントが使えるようになったのは3期目、4期目に入ってからでした。
面接をしても、とにかく妥協しなかったので、採用率はものすごく低かったです。でも、一度痛い目にあったので、それしかなかったんです。カルチャーを理解してくれる優秀な方を、厳選して採用していたという自覚はあります。

「データ×テクノロジー」複数事業の組織に必要なHRとは

徐々に従業員数が増え、複数の事業を展開するSpeee。採用には、複数事業の会社ならではの難しさがあるという。HRのレベルを上げるために、どのような取り組みや体制づくりを行っているのだろうか。

「データという強みで、複数事業を展開していくためにHR組織も強化している。」と大塚氏は語る。

ー 従業員数が増え、採用において転機はありましたか?

大塚氏:
従業員数100人を超えてからが、変わり目だったと思います。
人数が増えてくると、物理的に僕がすべての面接に出るのは難しくなっていきますよね。従業員数が100人を超えてから、「想定グレード」という社内のルールができて、想定グレードの真ん中以上は僕が出る、というふうに変わっていきました。

現在僕が面接をするのは、新卒採用は全てですが、中途採用ではかなり上のエグゼクティブ層だけですね。
また、事業数が増えると、それぞれの事業を理解している人間が必要になってきます。人事組織も拡大し、さらに高いレベルが求められるようになってきたと思います。

僕らはいろいろな事業をやっていますが、どの事業にも共通して言えるのはデータの取り扱いが強いという点なんです。そこをきちんと理解した上で、面接のコミュニケーションに落とし込まなくてはなりません。
「イエウール」という不動産売却のマッチングプラットフォームを運営していますが、ただ不動産業界に詳しいだけでは、Speeeにフィットした人材とは言えないということなんです。
1ミッション複数プロダクトの会社は、人事のレベルが高くないと、優秀な人材を取り続けられないと思います。

ー 質の高い採用を続けるために、人事のチームづくりはどのように行っていますか?

大塚氏:
これにも変遷があります。中途も新卒も同じチームが採用していたところから、中途と新卒が別チームになり、中途の中でもエグゼグティブの採用と、メンバー採用に分岐してきました。また、ものづくり(エンジニア)採用の選任チームも作り、大きく貢献してくれています。

部署にし、キーマンをたててプロモーションを強化し、採用における認知度を高める。チーム体制を変えて、KPIは非常によくなりましたね。中途採用のエグゼクティブを担当している岩澤は、社長室長や海外事業部長をずっとやっていた人間なんです。彼にエグゼグティブ採用を兼任してもらったら、ここも進みが良くなってきました。

また、各事業部にもHRBPという組織を置いています。HRBPの役割は、現場の人間がミッションに対して最も集中できる環境を作ること。
ただ、機能を分割していくと、分岐されたチームのアップデートが弱くなってくるタイミングがあるんです。そこで、各チームをシャッフルさせたり、HR戦略の人間も入りながら、各部署の課題が停滞しないように工夫しています。

また最近では、エグゼクティブ層を採用し、組織にどうフィットさせるのか。その引き出しが増えてきたと感じています。
あまり上の人を採用しすぎると、既存の組織にどうやってフィットさせるのかという問題がよく出てきますよね。僕らも、うまくフィットさせられず、幹部採用を敬遠していた時期がありました。

その頃は、CXOレベルの人間をとったら、経営陣がちゃんとコミットして、コミュニケーションの量を担保していくとか、その人が成果を出すまでフォローしてあげるとか。王道なんですけど、そういう手法しかなかったんです。
でもその手法で進めていくと、実力がある人ほど早期に結果を出そうと頑張ってしまう。短期的な成果を求め、これまでにやってきたことを否定しがちになり、何かを得るんだけれども、何かを失っている。成果や組織のレベルが純増しないという感覚がありました。

でも、ここ2年で役員数が5人から9人(専門執行役含む)に増え、ようやく馴染ませ方のコツのようなものがつかめてきた感じです。
例えば取締役の人間が、とあるエグゼクティブの人間を見ているという時。他の役員もその人間の馴染み具合を、焦りもしないし、せかしもしない。でも期待していないわけではない。短期的な成果ではなく、長期的に関係資産を構築していく。そういう馴染ませ方もあるんだと。

また、増えた4人の役員うち3人はエンジニア系の役員なんです。彼らがいるから、ものづくりのところも組織ができ、会社の強みといえるようにもなってきました。
ボトムアップだけじゃなく、トップダウンもセットでやって、早期に新しいケーパビリティを獲得できるようになったな、と思います。これは会社として新しい引き出しが増えたと思います。

BNGパートナーズを利用し、
半年で5名のエグゼクティブ層を採用

さまざまなエージェントを利用する中で、BNGパートナーズからの紹介で5名の採用が決定。利用のきっかけや、サービスを利用しての率直な感想を、エグゼクティブの採用を担当している社長室長岩澤氏に伺った。

エグゼクティブ採用担当 岩澤氏:
前任の採用担当者の時代(およそ9年前)に、BNGの社名の由来である「馬鹿が日本を元気にする」というスローガンが面白い、という理由でお付き合いがスタートしました。
本格的に依頼をしたのは、Speeeの100%子会社であるブロックチェーン事業『株式会社Datachain』を立ち上げた直後の2018年4月です。優秀なブロックチェーンエンジニアや事業開発人材が少ない領域で、採用はかなり難しいだろうと思っていたので、エージェントも複数依頼していました。
でも、BNGさんからの紹介で、半年の間で次々に採用が決まったんです。そんなことは普通ありませんよね。とにかく、他のエージェントが連れてこないはずのタレントを、連れてきてくれる。
例えば、チーフデータオフィサーというような、日本の中ではかなり希少種で、その中でもトップ3に入るであろう人材をご紹介してくださったり。どうやってその人材を見つけてきてくださるのか、毎回驚いています。
それに、見つかってから打合せを重ねるところにも、同席し、細かい機微まで理解してくださる。的確なアドバイスもくださるので、非常にお付き合いしやすいですね。
実際に本格的にお付き合いを始めて半年でこれまで、事業開発マネージャー、経営企画マネージャー、シニアプロダクトマネージャー人材など5名をBNGさんからのご紹介で採用しています。

より強い組織づくりのためにできること

最後に、さまざまな段階を経験してきた大塚氏に、初期のベンチャーがやっておくべきことについてアドバイスを頂いた。また、ミドルベンチャーからメガベンチャーへ。着実に歩みを進めるSpeeeのこれからについて。取り組んでいきたいことについても伺った。

ー スタートアップのフェーズにいる企業が、強い組織を作るためにやっておくべきことはありますか。

大塚氏:Speeeでは2期目の失敗を原体験に、カルチャーはとにかく大事にしてきました。毎朝、カルチャーを体現できているのは誰かとか、カルチャーについて話すとか、ずっと青臭いことを続けています。

これが結果的にすごく良かった。今からはじめようとしても、こんなこと絶対できないです。当たり前のようにやっている文化があるから、新しく入ってきた人の引力や理屈に負けないし、その人も当たり前のようにそれをやる。文化レベルになるというのはそういうことなんです。
そして、それを後からやろうとするとコストも時間もかかります。会社のミッションは後から作ったので、日常に溶け込ませるために、社内のエントランスや会議室などにアートを書いたり、コストがかかりましたね。

スモールチームのうちにカルチャーを作っておくのは、利回りのいい投資 案件 だと思います。昔から刷り込んできたもののほうが、新しい人たちにも浸透する速度が圧倒的に速いです。
どんな経営者でも、必ず何かしら失敗はありますよね。その失敗を原点に、体感を言語に変えていったり、文化に変えていくというのは、賞味期限が長い、強いメッセージになります。

「どんなに素晴らしいテキストを読んでも、自転車には乗れないということです。」体感をした人が、文化を作っていくべきだと、大塚氏は語る。

ー 今後のSpeeeの組織づくりで、力を入れていきたいことは何でしょうか。

大塚氏:
僕は「ミッションに向かって集中できる環境」が最も優れていると思っています。その環境を作るために、もっとデータを活用して組織づくりをやっていきたいですね。
昔より、データは格段にためやすくなっています。例えば、AIで誰がどこのポジションにいたほうが成果が出るとか、ある程度判定は出せるようになっています。現在はAI単独でジャッジするまでには至っていませんが、今後はそれも可能になるでしょう。

そういう時代に備えて、今からしっかり設計をしていく。自分たちのミッションに対してもっとも望ましい形というのを、論理的に特定する。「ピープルアナリティクス」を究めていきたいですね。

これは、次世代の働き方やキャリアづくりをサポートしていく、ということでもあると思うんです。
転職が当たり前の社会になり、数年働いて年齢も上がってくると、キャリアチェンジをしないと不安に感じる人も多い。でも、社内でも環境は変えられると思うんですよ。

今はいい会社を探すためにデータを使うケースが多いと思いますが、自分が今アンマッチだと思うならば、マッチングが高い環境づくりに着手するため、能動的なアジェンダを作るために分析を活用すべきだと思います。
会社の中にもさまざまな機会があるし、チャンスはある。Speeeはデータの会社なので、ここは腕の見せどころです。データを使って、働いている人たちの悩みを少しでも取り除き、ミッションに集中できる環境を作っていきたいですね。

(撮影:山田健司 /取材・文:安住久美子)

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