最高人事責任者:組織を動かす挑戦者たち

「事例は自社にしかない」アイティメディア株式会社 総務人事担当部長 浦野平也


 

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 大学は商学部でした。当時は漠然と都市銀行や証券会社に就職を考えていたのですが、全く決められずに悩んでいて。そんなある日、たまたま足を運んだ企業説明会で、偶然ソフトバンクの孫正義さんのお話を伺って、目から鱗がぽろぽろと落ちました。この会社に入る為に生まれて来たんだと思うくらいにその魅力に惹かれてしまい、それまで幾つか頂いていた内定を全て断り、1997年に新卒でソフトバンクに入社しました。

 

 入社してまず最初は広報を担当しました。当時のソフトバンクはまだ今のように大規模な企業ではなくて、社員数も900人ほど。広報はIRを含めて6人しかおらず、最初からいきなり社長の取材に対応したり、新聞記者の対応をしたり。

 

 仕事自体はとても楽しかったのですが、新人が担当するものとしては中々に大変でした。しかしそのときに孫さんの取材などに立ち会い、毎日のようにお話を伺いながら、ソフトバンクの企業理念、経営理念に触れ得たことは、現在に至るまでの仕事に取り組むモチベーションに多大な影響を受けていると思います。

 

 広報を一年半担当した後に、新卒採用に携わりました。人事企画等も担当しつつ、2005年にソフトバンクが通信業として本格的に事業拡大を志したころには、新卒で3000人を採用する、というプロジェクトを担当しました。これはもう、大変な思いをしました。

 

 元々は300人程度の採用を見越して、その年の5月までには殆どの面接を終えていたのですが、そこから3000人を採用するという通知が来て。リクナビのバナー広告を一面ソフトバンクで埋めたり、60万人の学生にDMを打ったり。電車の中吊り広告を出したり、あの手この手で告知しました。一日に100人近くの内定を出しましたから、今振り返ると本当に希有な経験だったと思います。

 

 そこから途端に会社の事業規模が大きくなっていきました。それまで比較的自由に動けていたこと、例えば採用チームの仕事と厳密には違っても、研修に携わる。事業部と連携を取って進行する等、共通の課題意識を持つ者同士で担当出来ていたことが、業務階層が細かく別れて、決済や許可をその都度各所に取らなければいけない、ということが目に見えて増えていったんです。

 

 少しずつ自分の思い描いていた、憧れた環境とズレが生じ始めていました。そんな折に、もともとソフトバンク出版事業部の広告局長だった、当社社長の大槻に誘われ、アイティメディアに人事担当として移籍しました。2006年からは総務人事担当部長として配属され、現在に至っています。

 


 

itmedia1 - コピー新しいウェブ時代を支える企業のなかで〜人事という側面から〜

  我々の扱うインターネット・メディア事業は常に変革している時期にあり、新しいウェブコンテンツ時代を支える企業として存在価値を見いだす為にはどうすればいいのか。その為に人事という側面からどういったアプローチをすればいいのか、ということは常々考えています。

 

 例えば、どうしても人事という仕事の性質上、他社事例であったり、ケーススタディを調査収集してしまう傾向にあることは否めないのですが、そのことだけに思考を強めてしまうのは非常に良くないと思っています。

 

 事例というものは自社にしかない。SNSを利用したソーシャルリクルーティングや、今年から試みている他社との合同選考も、他社の事例をそのまま取り入れたというわけではなくて、我々にとって何が課題なのかをしっかりと見据え、その課題をクリアする為に必要なツールを選択した結果です。そしてそこに経営戦略・戦術が結びつけば、やがては成果に結びつくのだと思います。

 

 これは一般論になるかもしれないですが、企業が人の集合体だとすれば、その人達が成長する為の環境をどのように整えていくか、準備していくのか。何か新しいことを始めようとしている人なり組織が、なるべく障害なく進めるように環境をコントロールしていくことはとても重要です。

 

 ほかに近年で試みている施策としては、教育・育成に力を入れていまして、幹部育成の研修プログラムや、全社員に向けたテクノロジースキル向上のプログラムを実施しています。我々の仕事の性質上、どのような仕事をしていてもテクノロジーに対する一定の理解は必ず必要になりますから。

 

 また、新入社員研修は現在、自社だけでは行わずに、IT業界関連の5社合同で行っています。自分たちだけで自己完結するのではなく、他社が持っているノウハウと比較することで、健全な競争意識が生まれると思います。自社だけに最適化していくのではなく、この業界の未来の為に最適化していくことが、ひいては業界全体の活性化に繋がっていくのでないかと。今年度からは更に規模を拡大し、7社合同で研修を行う予定です。

 

 我々のような100〜200人規模の会社で、毎年3〜5人しかいない新入社員にとっては、他社の状況が垣間みれるというのはとても貴重な機会だと思います。どうしてもその規模だと、自らの会社の中だけで完結してしまいがちで、視野が狭くなってしまうので。我々人事にとっても合同研修というのは試行錯誤の場なので、その様子を新人に見せられるというのもいいのではないかと感じています。

 


 

itmedia2 - コピー (2)若き人事担当者へ

 自分たちの会社、また会社が所属している業界、ひいては日本という国、そして世界経済に対して正しいと思うことを検証する、注視する。そこからしか会社の戦略の正しさを検証することは出来ないと思いますし、そのサブシステムである人事・採用の戦略を考察することは出来ないのではないかと考えていますので、常にそういった意識を持って臨んでほしいと思っています。

 

 今は企業だけがメディアなのではなく、個々人もメディアになれる時代なので、自らが発信して、色々な形で自分が信じられるものとの幸せな出会いを創っていければ、自ずと自分にとって、会社にとって、重要な仕事が出来ていくのではないでしょうか。

 

浦野平也プロフィール
生年月日   1972年8月11日
好きな食べ物 故郷で食べる信州蕎麦
好きな本 企業価値の断絶/フェイスブック時代のオープン企業戦略/塩狩峠
好きな場所 自宅のリビング
好きな映画 ブラック・スワン/秒速5センチメートル
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