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最新インタビュー

『数十~数万人の企業規模にも通ずる
働きやすさを追求した組織造りの考え方』
株式会社ウィルゲート 執行役員 山中諭氏

■大企業人事とベンチャー人事、基本は同じ

Q:まずは子どもの頃から今までの道のりをお話しいただけますか。

A:活発で、外で泥んこになりながら遊ぶ子でした。ずっとサッカーをやっていて、高校時代は仲間に恵まれ楽しく過ごしていました。様々な場面でリーダー的な存在になることは多かったと思います。当時は進学を甘く考えていて、高校3年の12月まで部活をした後に1校だけ大学を受験したのですが落ちてしまいました。そして1年浪人をし、東京学芸大学に入ったんです。

学生時代は先生になりたかったので大学では小中高の教職を取ったのですが、就職する際「一度社会に出て自分の実力を試したい」と思い、教員ではなく会社員の道を選ぶことにしました。

Q:社会人生活のスタートについて教えてください。

A:日本ケンタッキーフライドチキン株式会社で1年半営業を担当した後、社内公募で人事へ異動しました。外食産業は人事的に鍛えられることが多く非常に勉強になりましたし、大きな会社で人事制度の改訂や人事採用も経験できた5年間は、現在の人事としての糧になりました。

Q:その後転職をされたきっかけを教えてください。

A:2010年の4月に弊社が載っている本を偶然書店で見つけたことです。その本の中にあった「お客さまや世の中、社員を大切にする」という社長のコメントに感銘を受けました。その本にはベンチャー企業が100社ぐらい載っていましたが、その中から1社だけ目に留まったんです。その会社がウィルゲートでした。
転職活動に注力していた中で見つけた、というわけではなく、たまたまウィルゲートが目に留まり社長と話し、彼の想いに共感して入社したんです。

Q:当時、貴社はどのくらいの規模だったのでしょうか。

A:20人ほどです。ケンタッキーは従業員20,000人ぐらいでしたので、およそ1,000分の1の会社に入って、年収は半分近くになりました。

Q:年収を半分に落としても行きたいと思った、ということですよね。

A:そうですね。前の会社も好きでしたが、「自分の力を試すならベンチャー企業だ」と考えました。ただ、今の社長と出会っていなかったら、今もケンタッキーで働いていたと思います。

★ウィルゲート山中氏 インタビュー横

Q:実際に入社されてからこれまでのことを教えてください。

A:ウィルゲートには2010年の8月に入社し、人事部の立ち上げが最初の仕事でした。人事制度や評価体制はおろか、勤怠管理さえもしっかり行えていない状況でしたので、全てをイチから作っていきました。トライ・アンド・エラーを繰り返し、多くの失敗・ちょっとずつの成功を経験しながらここまで来ました。

Q:大企業の人事を経て、今のベンチャー企業をどのように感じていますか。

A:自分が全く知らない、経験したことのない世界ですので、非常に楽しいですね。新しい事業や組織づくりに挑戦したり、違う価値観にも触れ合えたりすることも。ただ、大企業もベンチャーも、良い組織づくりの基本的な考え方はそんなに変わらないように思います。

■今になってわかるミドルマネジメントの重要性

Q:これまで人事面での課題にどのように対処してきたのでしょうか。

A:昔は完全に営業の成果を見る制度でした。ですがそれだけではだめで、中長期的には会社の成長を見据えた制度が必要だと感じるようになりました。それで今は定量と定性を50%ずつに分け、定性のところでは中長期的な成長に寄与する制度設計にしました。その時の人数やフェーズに合わせた人事評価制度が必要だと考えています。

Q:例えば20人強の組織が、これから30、50、100人となるときにいろいろな悩みが出てくると思いますが、先人としてアドバイスするならどんなことでしょうか。

A:中間層の人、ミドルマネジメントの教育を早い段階からしっかりやっておいたほうがいいですね。
規模が小さいときの経営陣をはじめ、上位役職者に能力の高い方々の割合が多いので、そこで引っ張ることができるんです。その体制で50人とか、100人規模まではしっかりマネジメントも行き届くのですが、そこでミドルマネジメント層教育を怠るとメンバー層がしっかりと教育されず、不満を持って辞めてしまうことが起こります。これは弊社の反省でもあります。

★ウィルゲート 山中氏 インタビュー前

Q:御社の人材教育で気をつけていることはありますか。

A:規模の小さな時期から、コミュニケーションや研修には予算を割いてきましたが、結果論として、もっと投資をしてもよかったとは往々にして思います。とはいえ、この研修を入れたら絶対いいという研修なんてなかなかありません。社内外含めてさまざまな研修がありますが、研修が無駄にならないように、実務に落とし込むことが大事だと考え、実践するようにしています。

Q:例えばどのような研修をしていますか。

A:ミドルマネジメントや選抜メンバーが受ける研修を実施しており、実は今朝、1回目をやったばかりなんです。私自身、人事制度を作り、労務も全部見てきましたし、前職時代にも社労士の勉強もして、前職では労務トラブルもありました。そういうのも大変ですが、何よりも教育が難しいと感じています。

Q:教育のどんな点が難しいと感じていますか?

A:スキル的、テクニック的な研修はそれほど難しくなく行えますが、彼らのマネジメント力や地頭を鍛える研修になると非常に難しいです。こうした研修は、ただOJTを行うだけではなくOJTをどう取り入れていくか、またその人自身がどういう経験してきたかが重要だと考えています。つまり、研修による教育、そして各々の経験による教育の両方が必要です。

Q:御社の新卒社員と中途社員の採用バランスはどれくらいなんでしょうか。

A:今、社内の約6割が新卒社員です。あえて新卒の育成方法、中途の育成方法、と分けて考えてはいません。もちろん新卒採用者にはしっかり教育しなければいけませんが、それは中途採用者も同じだと思うんです。というのも、最近まで中途の方々が成長を求めて辞めていくことがありました。それを今まさに変えている段階です。教えるというより、学ぶ姿勢をサポートする制度を新しく入れることにしました。

★ウィルゲート山中氏 執務室

Q:「学ぶサポート」とは具体的にはどのように行っているのでしょうか。

A:外部の研修に行ったり、本を買うお金を会社が負担するといったものですが、これ以外に開発部門だけに入れた制度があります。それが「5%ルール」というものです。
Google社には「20%ルール」といって業務の20%を自分の自由な時間に使えて、勉強や開発ができる仕組みがあります。それをヒントに業務時間の5%を自分の勉強する時間に使う「5%ルール」制度を作りました。
このルールはこれから軌道に乗る段階ですね、まずはそういう環境を整えることが大事だと考えています。

Q:多くの企業の方とお話する中で、「制度を作ったもののうまく回らない」よくお聞きします。

A:私は弊社の制度の大半を作ってきた身ですが、リリースしたものの社員につかわれなかった制度や効果が得られなかった制度もたくさんありました。作ってみて「これは明らかに社員のためじゃないな」と後々気づくものもあるんです。そういう制度はやめていい。
ただ、これは絶対社員のため、お客さまのためという制度であれば、粘り強くやっていくと成功すると思います。先ほどの5%ルールもまだ完全には回り始めていませんが大切な制度だと感じているので、実行しながらメンバーとともに改善していきたいと思います。

■答えがないこと。それが人事のおもしろさ

Q:御社の事業領域はいわゆるコンテンツマーケティングですが、今後はどういう展開をイメージしていますか。

A:企画・生産・拡散・検証のすべての工程において、より付加価値を出せるよう投資を行っていきます。
例えば弊社の持っているクラウドソーシングのサービスも、オウンドメディアのサービスも、すべてコンテンツマーケティングそのものです。クラウドソーシングは生産部分、オウンドメディアは拡散部分にあたります。弊社であれば「自社でクラウドソーシングサービスを持ち、そこからwebのマーケティングも行えて拡散もできる」というように、様々なことが自社で行える仕組みを持っているため自社のサービスを活用することでお客様への提供価格を抑えることができるんです。それは弊社の強みのひとつだと考えています。

Q:その上で、人事としてどういう組織を作っていきたいですか?

A:挑戦する人を引き上げて、彼らが輝く制度や評価にしていきたいと思っています。例えば現在、弊社には兼任チャレンジ制度というものがあります。これは、条件をクリアした人が「この部署で働きたい」と手を挙げると、現部署そして希望部署の両上長が承認すれば兼任ができるシステムです。

Q:ただいわゆる営業職はノルマなどしんどいものが多いように思うのですが。

A:もちろん彼らもつらいと感じる面はあるかと思いますが、それ以上に、いろいろな局面で価値を提供できること、チームとして大きな成果を出していけることが楽しいと感じるメンバーが多いので、満足度は高いと感じています。
また、そう感じられる人にうちの会社を選んでもらうことも大事だと考えています。ですので、エントリーマネジメントは非常に重要だと思っています。

★ウィルゲート山中氏 廊下

Q:採用において独自のスクリーニング方法があるということでしょうか。

A:そうですね。前提として採用の際は多くの従業員に会ってもらいます。人事担当者だけではなく、現場のメンバーが応募者の方に会う機会も多く設定しいろいろな角度から見極めるようにしていますね。
新卒でも中途でも最低でも2回、多い方で10回以上面談を行います。

やはり一緒に働く方ですので、その方自身に「この会社で合うかどうか」を見極めていただきたいですし、ギャップをなくしたいんですよね。そのギャップがあるとお互い不幸になってしまいますし、働いていて楽しくなくなりますから。

Q:最後に、人事担当者に向けてアドバイスをいただけますか。

A:人事は、現場と経営との結節点です。なので、両者の声をしっかり聞かなければいけないと思っています。
それを踏まえ、私が大切にしている人事の考え方が3つあります。1つ目は、やはり現場の方々が働きやすい環境を作ること。2つ目が、経営の声をしっかりと反映すること。3つ目は、非利益創出部門なので、見えるかたちで、より成果を出すようにすること。
一般的に人事は“経営側の人間”として見られがちですが、現場に寄り添えないとうまくいかないと私は思います。現場に寄り添うには、体力を使いますが、その体力を惜しんだら、会社にとって理想の人事にはなれません。これは人事のメンバーにもう何年も言い続けていることです。

Q:では、人事の醍醐味はどんなところにあるのでしょうか。

A:答えがあるわけではないことが人事の大変なところでもあり、おもしろさだと思います。
どんな人事担当も社員のこと、会社のことを思って制度を変えるわけですが、それがなかなか社員から評価されないことがあります。これは人事ならではの悩みだと思います。
マネジメントや人事関係に関する書籍が多く発刊され、ベストセラーになっているということは、皆悩んでいるわけです。
でも、だから人事っておもしろいんだと思います。参考書に書いてある答えをそのまま実行すれば上手くいくわけでもないので、成果を出す方法を自ら探し出せることがやはり人事の醍醐味だと感じていますね。
--ありがとうございました。