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「踊れるエンジニアが語るマネジメントの極意とは?」 チャットワーク株式会社 専務取締役CTO 山本正喜


 

略歴
大学在学中より兄の山本敏行とともに兄弟で創業。以来,製品開発担当として企画・マネジメントを行いながら,現在も自らプログラマとして現場の第一線で開発を行っている。

■学生時代から経営をされている山本さんにインタビューをさせて頂きます。エンジニアとして経営に携わる秘訣は何ですか?

 

自分は役員も兼務しているため、技術面だけでなく会社における物づくりに関する責任者だと思っています。

物づくりとは総合力だと思っているので、企画や開発、開発組織のマネジメントなど、何でもやることが大切だと思っています。

 

小学生時代からゲームが大好きで、ずっとゲームクリエーターになりたかったんです。ファミコン世代だったので、とてもはまりました。

中学生になると作る方がやりたくなったんです。

親のお古のパソコンを小4くらいにもらって、ベーシックのプログラムを書いて遊んでいました。

プログラムをある程度分かっていたというのと、ゲームを簡単に作るツールが流行った時期が重なって、割と簡単にゲームを作ることができたんです。

作ったものを友達に遊んでもらって、さらに改善して、対戦したりして。

自分で遊ぶよりもゲームを作った方が面白いと思ったので、ゲームクリエーターになろうと思っていました。

どうやったらゲームクリエーターになれるかと思ったら、プログラムもできなきゃいけないし、デザインも出来なきゃいけないし、シナリオや全体のディレクションを全部一人でやらないといけないと当時思っていたんですね。

だから、プログラムからデザインから、音楽から、全部勉強しました。

若いなりに、浅く広く勉強しながら、パソコン通信のニフティサーブにゲームをアップロードして、ユーザーの皆さんから感想をもらって日々、改善をしていたんです。

この時の経験は、いまの自分のものづくりのベースになっていますね。

 

■ものすごい充実した、学生生活だったんですね。

 

小学校はとても楽しい生活を送っていました。

将来は、ゲームクリエイターになると張り切っていたのですが・・・

実は、中高時代から挫折期に入るんです。

 

中学でいじめにあった時期がありまして、人間不信になっていたんです。

かなりひきこもりみたいになりまして、対人恐怖症みたいにまともに人と話せない状態になりました。

そこで、ますますパソコンにのめり込んでしまったんですね。

高校2年生くらいのころは、オンラインRPGの走りだったウルティマオンラインが流行し始めていたんです。

その初期のユーザーとして、高校の頃はかなりはまっていました。

23時から翌日の7時までネットが定額で使えるテレホーダイに契約して、夜から朝までやっていました。

それをフル活用するために、学校から帰ったらまず寝る。そこから21時くらいに起きて来て、オンラインにつないで、朝7時までゲームをする。それで8時くらいから学校に行って、学校の授業で寝る。家に帰って来てご飯食べてまた寝る(笑)

ネトゲ廃人という感じで、一応学校には行っているけど、すべての授業で寝ていました。

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■今じゃ、考えられませんね。 転機はいつごろだったんですか?

 

高校時代の終わりごろですかね。

高校2年までウルティマオンラインをずっとやっていたのですが、

このままでは駄目だと思い、きっぱりやめたんです。

高校3年の勉強に何もついていけなかったので、高校1年時の勉強からやりなおしました。

そこから、一夜漬けのようなものですが詰め込みで急激に成績を伸ばし、なんとか電気通信大学に入ることができました。

ずっと高校までひきこもりをやっていたこともあって、大学では自分を変えよう!と意気込んで大阪から東京に引っ越しました。

ただ、電通大は、学部が全部理系の大学で男が9割。全国で一番ぐらいオタクな大学だったんです(笑) それはそれで楽しいのですが、この学校で本当に変われるのかなと不安に思っていました・・・

ならば、部活やサークルに参加すれば変わるのではと思っていたら、そこで人生の転機があったんです。

大学時代にある部活に入ったんですね。

その部活に入るきっかけとなったのは新歓なんですが、新入生を100人ほど集めて連日飲み会を開いて、全部タダなんですよ。

なんなんだ、この部活はと思いましたね。

大学生になって初めてお酒を飲んだので、これが飲み会かと思って、とても楽しかったんです。

今まで部活にも入ったことがなかったので、先輩後輩の関係がとても良くて、すごくいいなと思っていました。

まぁ、それが先輩たちのトラップだったのですが・・・

 

新歓期間が終わった後は、先輩から「休みの日に他校の女子を連れてくるから遊びに行こうよ」と誘われたんです。

男子校みたいな私たちとしては、行くしかないじゃないですか。

そして当日、現地についたら、たくさんの男子と女子がいて、そこで、自己紹介ゲームなど新歓っぽいことをやっていたら、急に先輩たちが着替えだして、ドアも閉めちゃったんです。

あたりは、「なんだなんだ」みたいな雰囲気になりまして・・・

そしたら先輩たちが、実は、ダンス部なんですと言い出したんですよ。

「これから僕たちの練習を見て下さい」的な流れになりまして。

今までふざけていた先輩たちが急にまじめになって、声は張り上げるわ、気合い入っているわで・・・超体育会系の部活だったんですよ。

まあ、もちろんみんなドン引きするわけなんですが(笑)

そのダンスって言うのが、競技ダンスなんですよ。

あのウッチャンナンチャンがやっているようなダンスです。

 

もちろんほとんどの新入生は引いちゃって部活には入らないわけなんですが、この部活に入れば変わるんじゃないかという期待を胸に僕は入部しちゃったんです。

 

電通大のダンス部は全国でもトップクラスで強いんですが、監督もコーチもいない、4年間で生徒が全員入れ替わる環境で、コンスタントに勝ち続けるために、いろんな仕組みがあったんですね。

1、2年生の頃は、必死に厳しい練習に耐えるだけで仕組みなんて全然わからないんですが、3年生になると突然幹部会議というものがあると知らされるんです。

まさにこの幹部会議が仕組みの根幹なんですよ。

幹部会議の最初は、4年生から3年生へ引き継ぎがあるんです。

4年生から「これからはお前たちの代だから、お前らで考えろ」って、まずは、部の目標を決めさせられるんですね。

1、2年の頃の不満があるので、もっと楽しくやりたいだとか、様々な自分勝手な案が出てくるのですが、4年生に提案しても全部ロジカルに却下されるんです。

結局、最終的には先輩たちに目標を「全国優勝」に持って行かされるんです(笑)

 

そして、その目標を達成するため、じゃあ1年生はどういう状態まで持って行かなきゃ行けないのか、2年生はとビジョンを決めるんですね。

そのビジョンを達成するためには、いつまでにどのくらいできていなきゃ行けないのか?を決め、スケジュールに落とし込む必要があるんですね。

すべての練習に毎回違う重点指導ポイントがあって、姿勢や動き方などを、少しずつつくりあげていくわけです。

優勝出来る仕組みがある訳ですよ。

いま思えば、本当すごいなと思います。

ビジョンや目標をまず決めてから計画に落とし、現実にしていくというこのやり方は、いまの会社経営においても大変役立っています。

 

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■充実した大学の中で、技術はどのようにして学ばれていたのですか?

 

すべて独学ですね。

詰め込みの大学受験勉強の時に目覚めた独学力を活かし、同じような本を10冊くらい読み込み、実践するの繰り返しをしていましたね。

丁度、大学3年生の頃に兄がロサンゼルスに留学していたのですが、そこで兄がネットでビジネスをはじめたところうまくいっちゃって、パンクするくらい注文が殺到したんです。手がまわらなくなった兄がこれをシステム化できないかなと考えたみたいで、「お前、電通大行ってるんだからこれ自動化できない?」って言われたんですね。

実は当時ほとんどプログラミングはできなかったのですが、じゃあやるかってなって技術の勉強を始めたのがきっかけです。

学生時代で時間があったこともあって、部活以外の時間はずっとコードを書いていました。

 

 

■ネトゲ廃人から、体育会系部活、学生起業とすごく色々な経験をされていますね。今の役職にも活きているんじゃないですか?

 

そうですね。

様々な経験をしてきたのですが、実は、少し前までCTOと呼ばれるのが嫌だったんです。

今はCTOと付けていますが、付けたのは去年くらいなんです。

以前は、CTOって言うとなんだか技術だけの人みたいなイメージがあって・・・。

自分はものづくりに必要なことはなんでもやってきたので、違うなと。なので、役職は「専務取締役」のみにしていました。

ただ、最近社内外でCTOと呼ばれることが多くなったものですから、ある日そもそものCTOの定義を調べていたら、そういう意味じゃないんだなって気付きまして。CTOって経営者なんだということに気がついたんです。自分のやってることに近かったんです。

また、日本だと、CTOと言うとエンジニアでビジネスの話はあまりできないって思われていることも多いじゃないですか。

お客さんと会ったとき、僕は技術以外のビジネス的な部分も話せるので、CTOなのにって思ってもらえてラッキーだったりするんです。(笑)

そのギャップも良いなと思っていたりします。

 

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■これからCTOを目指している方々にアドバイスを下さい。

 

CTOって会社のフェーズによって、やるべきことが違うんですよ。

10人以下くらいの企業であれば、CTOは、トップエンジニアとしてグイグイ現場を引っ張っていく人であるべきだと思う。そうでないと、人が着いてこない面があるので。

僕もちょっと前までは、そういうポジションで自分が一番出来る人で他の人に教えて来たという感じでした。

しかし、会社が拡大をしていき、エンジニアの人数も増えてくると、プログラミングだけやっていれば良いなんてことはなくなってくるんですね。

そうしたら、不安になるんですよね。

マネジメント業務が増えていき、どんどんプログラミングできる時間は減っていって、僕はエンジニアとしてどうなんだと思っていたんです。

このジレンマを乗り越える、あるきっかけがありました。

それが、マネジメントもプログラミングだと思えたことだったんです。

 

プログラミングってオブジェクト指向って考え方があるのですが、オブジェクトって物なんですね。

オブジェクトにはパラメータと機能があって、外からは中身は見えないんですが、操作は出来るんです。

それを組み合わせて大きなシステムを作っていくのですが、ある日、人もオブジェクトなんじゃないかと思った時がありました。

人オブジェクトは、これを作ってと言ったら、プログラミングしてシステムを作ってくれるオブジェクトなんです。

ただ、このオブジェクトはちょっと特殊で、モチベーションというパラメーターが上がったり下がったりすることでアウトプットも変わったりするんです。

そのモチベーションパラメーターはオブジェクト的には外から隠れていて(プライベートになっていて)、元気?って聞くとある程度の精度で返してくるみたいな。(笑)

 

要はマネジメントって、人オブジェクトをどのように配置し、物づくりをしていくかなので、これって一種のプログラミングだなと思ったんですね。

技術でプログラミングしようが、ディレクションしようが、マネジメントしようが物づくりっていうことには変わりはないんだなと。

そこから、マネジメントに対する見方が変わりました。

 

■マネジメントに困っているエンジニアは、多いと思います。もう少しアドバイスを下さい!

 

先ほどもお伝えしたように、マネジメントもプログラミングと考えることで、エンジニアの専門領域としてポジティブに捉えることが重要だと考えています。

規模が小さいうちは自分で書いちゃった方が開発スピードが早いですし、利点もたくさんあるのですが、規模が大きくなると、チームに自分自身で考えて行動してもらわないといけないんですね。

そのときに、自分で手を動かすことを手放すことを覚えないといけないと思います。

 

僕は幸いにも部活で経験できたんです。

4年生になったら、すべての権限を3年生に任せる。

1年生の時はあんなに頼りなかったのに、3年生で幹部になったら急にしっかりしてくるものなんですよ。

環境が人を作ると思っているので、この子は出来ない、ではなくてその立場にすれば出来るようになる。

自立できる環境を作ってあげるのが、マネジメント層の重要な仕事だと思います。

 

また、最近は技術の進化とともに物づくりが簡単になってきました。

今後、「俺は生涯プログラマーです」みたいな考え方はどんどん難しくなっていきます。

狭い意味でのプログラミング、つまりコードを書く技術そのものは、スキルセットの一つにしかなりません。

海外には、デザインも出来て、プログラミングも出来る人がたくさんいます。

 

日本は、学生時代から文系や理系のどちらかを自分に当てはめ、視野を狭くするような傾向があります。

それは、日本の相手の領域を侵さないという文化から来ているところでもありますが、そうやっていくと今の時代には勝てない。

今はデザイナーがプログラム書いて、プログラマーがデザインする時代。

だから、あまりとらわれずに、自分がやりたい職種なり物作りなり、サービス作りなり、そういうもっとマクロな視点でキャリアを作っていくと良いかなと思います。

さっき言った、マネジメントも物づくりの一つだと思ったように、全然つながらないようなことでも、自分の領域に出来るんじゃないかという視点で見ると、マネージャーとかマーケティングの人が何をしているかを興味を持って見られるのではないでしょうか。

 

 

■山本さんは、根っからの技術者ですね。

 

はい、そうですね。

どんな立場になっても、物づくりをし続けていきたいです!

 

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