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「努力は嫌い。でも、直すことが好き」
株式会社Viibar CTO
松岡 剛志


 

 bi-ba-Q:まずは技術との出会いも含め、松岡さんの生い立ちをお聞かせください。

技術との出会いは小学生の頃ですね。父親が買ってきたMSXを貸してもらい、『ベーマガ』に載っていたプログラムを打ちこんだりしていました。その後高校生くらいの頃にPC-9801に買い替えて、「テレホーダイ」を活用してインターネットにどっぷりはまっていました。
そして大学では建築系に進み、コンクリートなどの勉強をしていました。そのままゼネコンなどに勤めるつもりでしたが、当時は就職氷河期で、どうにも希望する職が見つかりません。そこでいろいろ調べてみると、クーラーが効くところに1日中座っていられて、人とコミュニケーションを取る必要がなく、しかも伸び盛りの業界があると知りました。就職先を選ぶ基準が「自分でも我慢できる仕事」だった僕にとっては、この上ない朗報でしたね(笑)大学の先生にお願いしてネットワーク管理者だったことにしてもらい、新卒でヤフーを受けて就職を乗り切りました。
ただ、入社直後は大変でしたね。未経験のエンジニアは僕だけだったので、同期に泣きながら技術を教わったのはいい思い出です(笑)

Q:ヤフーではどういった役割を担われていたのでしょうか。

あくまでも一エンジニアですね。最初の3年間は「ヤフオク!」や「Yahoo!ウォレット」など、お金が関わるサービスの基盤部分の仕事をしていました。大体わかってきたところでフロント部分に興味が沸き、自分から手を挙げて社内異動をしたんです。そこから2年ほどは、「Yahoo!不動産」でフロントを経験させていただきました。
フロントも大体把握できたところで、次に目を付けたのはセキュリティです。あまり好きな分野ではなかったのですが、あえてやってみようということで1年ほどセキュリティに携わりました。優秀なエンジニアと働いてみたかったのも、異動の理由の1つですね。当時のヤフーでは全社基盤チームの一機能としてセキュリティがあり、チーム内にはものすごいエンジニアが何名かいらっしゃったんです。

Q:未経験の分野に積極的にチャレンジされたのですね。もともとそういう気質をお持ちなのでしょうか。

そうですね。おそらく、父親の教育がベースにあると思います。父親は「本質」を重視する人で、「そもそも本質はどうなんだ」「物事の裏を考えろ」と言われて育ってきました。当時はあまり言うことを聞いていませんでしたが(笑)そこは自分の中に残っていたんでしょうね。
物事の本質を理解しようとする際には、幅広い視座が必要です。1つのことに特化するのも素晴らしいことですが、多くの視座を手に入れる方が僕の性分にも合っていました。ですから、「次は何をすれば面白い視座が手に入るだろう」という基準で異動していましたね。ヤフーは比較的自由に社内異動ができる会社だったので、僕としては非常にありがたかったです。

viibar_1Q:その後2007年にミクシィに入社されたそうですが、転職の背景を伺ってもよろしいでしょうか。

きっかけの1つは、チームの数名がミクシィに移ったことです。それに、僕も基盤、フロント、セキュリティと一通りのことは経験させていただき、そろそろ新しい環境に身を置こうかと考えていました。当時はまさに、「mixi」を筆頭にソーシャル界隈が盛り上がり始めた時期です。ですから、ミクシィを選ぶことに迷いはありませんでした。

Q:ミクシィでの大まかなご経歴をお聞かせください。

ミクシィに入社し、最初の3年ほどは1エンジニアとしてサービス開発をしていました。ただ、当時のCTO兼チームリーダーが複数の役職を兼任しており、隅々まで目が行き届かなくなっていたんです。そこでメンバー達と相談したところ、「この中で一番コードが書けない松岡さんがマネージャーになってください」という話になりました(笑)自分の中にマネージャーというキャリアプランがなかったので悩みましたが、ミクシィの人達もビジネスも好きでしたし、自分のパフォーマンスを発揮するためにも頑張ることにしたんです。以後はCTO、執行役員、取締役を務めさせていただき、最後の2年間は朝倉(朝倉祐介/元株式会社ミクシィCEO)と一緒に、会社を何とか立て直そうと頑張りました。一旦やりきったタイミングで2014年に退任し、約1年のニート生活を経て今に至ります(笑)

Q:業績改善にあたり、CTOとしてどのような施策を行われたのでしょうか。

僕は1つの大きな意思決定をしたくらいです。かつてのミクシィは、「mixi」という1つの事業で勝負に出ていました。何ヶ月もかけて大きいものづくりをして、そこに賭けていたんです。しかしそれでは、ヒットしなかった時のダメージが大きすぎます。そこで、今で言うアジャイルやスクラムに路線変更したんです。できる限り小さいものづくりをして、ヒットが出るまで回し続けるという戦法ですね。その中で「モンスターストライク」が生まれました。
戦略というものは、1つのことを突き通すか、何でもやるかの2通りしかありません。「mixi」がうまくいかないとなれば、残された選択肢は後者だけでした。大きい方向性を示したら、あとは人・物・金の算段を立てて、メンバーのモチベーションを維持するしかありません。言ってしまえばギャンブルですよね。それがたまたまうまくいき、どうにか勝ちに転じることができました。

Q:スクラムチームを組むにあたり、工夫されたことはございますか?

スクラムのチームごとにプロダクトオーナーを置きました。それまでは事業部長がすべての意思決定をしていたのですが、それでは物事が進まなくなっていたんです。プロダクトオーナーを置いて権限を移譲したことで下の方々がどんどん伸びるようになり、会社がスムーズに回るようになりました。
僕は、上に立つ人は誰でもいいと考えています。「技術者でなくてはいけない」というのはナンセンスですし、やれる人がやればいいんです。ただ、それまでのミクシィでは、技術者がビジネスを牽引することはほぼありませんでした。そこで僕は、プロダクトオーナーの半分をエンジニアにお願いしたんです。エンジニアはビジネスセンスを身に付けられますし、一方でディレクターや企画職だった方々はエンジニアとのコミュニケーションが密になり、責任感が強まります。双方が新しい視点を得ることができたのは大きな実りでしたね。どのプロダクトオーナーも頑張ってくださり、いい結果を得ることができました。

viibar_2Q:その後、Viibar入社までの道のりをお聞かせください。

僕はたまに、自分が絶対にやらないような行動を取る癖があるんです。新しい視点を得たいがゆえだと思うのですが、その1つがミクシィ退社後の世界一周でした。実は僕は旅行が嫌いで、海外もあまり好きではないんです(笑)
すぐに新しい仕事を始めても良かったんですが、急いで選ぶのもどうかなと思いましたし、次は本当に集中できる仕事がしたいという気持ちもありました。僕もエンジニアとして脂が乗り、一番いい仕事ができる時期だと思ったからです。そこで自分が日本しか知らないことに疑問を感じ、世界を巡ることにしました。
海外旅行の経験がほとんどなかった僕にとって、世界一周は非常に刺激的でした。同時に、日本の素晴らしさを改めて実感しましたね。帰国後は日本のGDPに貢献できる仕事がしたいと思い、Viibarという会社に行き当たりました。

Q:Viibarを選ばれた決め手は何ですか?

これはミクシィで投資を見ていた時にも思ったことですが、どんな事業もダメ出しできるんです。ですから、ビジネスだけを判断軸にして会社を信じ込めることはないと考えています。結局のところ、人なんですよね。どんな人が成功するかも正直わかりませんから、事業をやりきろうという気持ちがあるかどうかが重要だと思います。そういうものを持っていて、かつ気の合うメンバーを求めていたので、最後は3人で行った飲み屋が決め手になりました(笑)
Viibarは、とにかく魅力的な人が多いです。上坂(上坂優太/株式会社Viibar代表取締役)は賢く、情熱があり、ロジックがしっかりしています。小栗(小栗幹生/同社取締役)は驚くほどチャーミングですね。僕は転職活動中に会った人の名前をEvernoteにメモしていたのですが、後で読み返してみると2人の名前の最後に「チャーミング」と付け加えてありました(笑)
彼らも含め、皆が「Viibar」というサービスを良くしたいと心から願っており、そこに貢献したいという思いがあふれています。そういう環境で働くのは、すごく気持ちいいですよね。

Q:Viibarのエンジニアの数と組織体制を伺ってもよろしいでしょうか。

現在はインフラも含めて9名のエンジニアさんがいます。「Viibar」という核になる事業があるので、CFOの下に管理部門があり、CEO室があり、事業部の下に各機能がぶら下がっている状態ですね。ただ、ベンチャーですから組織体制は今後変化していくのではないでしょうか。
僕個人としては、究極的には組織は物事を解決しないと考えているので、形態は何でもいいと思います。大事なのは、あまりコロコロ変えないことですね。すべての組織形態にメリット、デメリットがある以上、100点満点はありません。ただ、組織を頻繁に変えるメリットは非常に小さいと思います。無駄なコストもかかりますし、マネージャーにもメンバーにも少なからず混乱を招きますよね。再編するよりも、メリットが大きくなるようにチューニングを繰り返した方が効率的だと思います。
中長期的にはすべての組織形態を社員全員が経験し、組織が物事を解決しないことを実感してほしいです。そうなれば、問題が起きても組織のせいにはできません。「自分達がリーダーシップを持ち、会社を良くしなくてはいけない」という意識が芽生えるのは、会社にとって大きなメリットになると思います。

Q:社内の開発環境を詳しくお聞きしたいです。

我々は主に2つのプロダクトがあります。 マッチングプラットフォームと制作ルームを提供する「Viibar」とデータ☓クリエイティブを支える「Bayhem」(仮称)です。インフラはAWSで、言語はRailsですがごく一部でGo を試験しています。GitHubでプルリクを飛ばし、レビューをし合いながら開発しています。他にはCapistranoやCircleCIなども使っています。社内コミュニケーションは Slack を利用しており、 HUBOT 経由で様々なオペレーションを回しています。結構モダンなものづくりをしています。
マッチングプラットフォームと制作ルームはそこまで負荷もかかりませんし、インスタンス数も多くありません。一応chefで回していますが、「手作業の方が早いのではないか」と感じるくらいです。そこは悩ましいところですね(笑)
僕はまだ技術の選定には関わっていませんが、今後そういう機会があればコミュニティなどの活発さを重視すると思います。どのくらいコミュニティが盛り上がっているか、作り手がどれだけ捨てなさそうかを軸にして選ぶでしょうね。
今後はクリエイターの皆様に向けたサービスにも挑戦していきますので、その際には別の技術を選択することがあるでしょう。

viibar_3Q:CTOとしての今後の展望をお聞かせください。

Viibarには本当にいい人達が集まっていますが、彼らは純粋であるがゆえにどこか不器用です。ですから、彼らが100%の力を発揮できるようサポートしたいと考えています。そのためにまず大切なのが、社内環境です。会社にいる時間はものすごく長いですから、環境が悪いとモチベーションが下がってしまいます。理想像は、月曜日の朝が待ち遠しくなる会社ですね。楽しく働く社員達に対し、「馬鹿野郎、残業しないで早く帰れ」と言えるようになりたいです(笑)
Viibarのミッションは、「動画×ITの力で人々のコミュニケーションを豊かにすること」です。環境を整えてものづくりのサイクルが早まれば、それだけサービスの質も上昇し、お客さんの幸福度も高まります。動画制作は難しいですが、重要なのはエンジニアの力量です。僕らが技術力を磨き上げれば、クリエイターの方もクライアントの方も「Viibar」を通して幸せになれますよね。幸いにしてViibarには優秀なエンジニアが集っていますから、まずはそこをめざして頑張っているところです。最終的には、「動画」で検索すると一番上に「Viibar」が表示されるくらいのサービスにしたいと思っています。

Q:今後エンジニアとしてキャリアアップをめざす方に向けて、メッセージをお願いいたします。

キャリアに行き詰まりを感じた時は、「自分の価値が最大化する状況に身を置いているか」を考えてみてください。エンジニアの中には、コードを書くのが好きな人もいれば、マネージが好きな人もいると思います。しかし、やりたいことと自分の才能がマッチするかは別問題です。こと仕事に関しては、いくら好きなことであっても、才能がなければやるべきではありません。
最近のものづくり業界ではスクラムが流行り始め、エンジニア、ディレクター、デザイナーの区切りがなくなりつつあります。そうなると、エンジニアリングだけしているわけにはいきません。プロジェクトにデザイナーがおらず、雇うための資金もない場合は、エンジニアがPhotoshopを使うのも1つの選択肢です。新たな技術を習得することで、他のメンバーにとって自分の価値が高まるというわけです。もちろん、好きなことだけをやっていられれば幸せです。しかし、自分の価値を高めることに視点を切り替えると、新しい選択肢が見えてきます。

Q:ありがとうございます。松岡さんは独特の感性をお持ちで、興味深いお話を伺うことができました。

大変恐縮です(笑)僕は多分、サポートすること、整えること、仕組みを作ることが好きなんですよね。以前「ストレングスファインダー」をやった時も、一番強く出てきた特性は「回復志向」でした。ある状況下で傷んでいる部分をより良い形にすることにやりがいを感じるんですが、基本的に怠惰なので(笑)どれだけ楽にそれが行えるかを真剣に考えているんです。マネジメント側に立つのも、その方法の1つだと思います。
ただ、それでは僕自身の価値はそんなに上がりません。そこで先ほどお話しした、多角的な視座が意味を持ってくるんです。僕自身がレベルアップすれば優れた判断ができるようになり、自分の価値も高まります。それが僕の考え方ですね。努力は嫌いですが将来楽になるための努力は我慢できるので、楽な働き方を模索している感じです(笑)

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