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テクノロジーが世界を変える。 人工知能でイノベーションをもたらすABEJAのビジョンとは ― 株式会社ABEJA CEO兼CTO 岡田 陽介氏


 

■略歴
1988年生まれ。愛知県名古屋市出身。10歳からプログラミングをスタート。高校で、コンピュータグラフィックスを専攻し、文部科学大臣賞を受賞。大学では、3次元コンピュータグラフィックス関連の研究を複数の国際会議で発表。2011年、株式会社響取締役CTO就任。サービス開発など技術全般を担当。東京のベンチャー企業に入社し、6ヶ月で最年少事業本部マネージャー昇格。四半期で数億円の事業開発を担当。その後、シリコンバレーに滞在し、最先端コンピュータサイエンスをリサーチ。人工知能(特に、ディープラーニング)の革命的進化を目の当たりにする。帰国後、2012年に日本で初めてディープラーニングを専門的に取り扱うベンチャー企業である株式会社ABEJAを起業。

コンピュータグラフィックスからディープランニングへ

――研究分野としての岡田代表の専門は「コンピュータグラフィックス」になりますか。

はい、そうです。その中でも、インフォメーションデザインや三次元コンピュータグラフィックス(3DCG)を専門としています。

また、当時使用していた3DCGで使用するGPU(Graphics Processing Unit/画像処理装置)という処理装置を、現在は、ディープランニングの演算でも活用しています。

高校時代には、インフォメーションデザインとコンピュータグラフィックスとの融合のような観点で研究をし、文部科学大臣賞を受賞しています。
また、大学在学中に「株式会社響」を立ち上げ、CTOに就任。技術全般を担当しました。

――どのような想いで起業されたのでしょうか。

自分の技術が社会にどう広がっていくのかを見てみたいと思い、起業することにしました。

当時は、今でいう、インスタグラムのような無料で写真を共有するアプリケーション関連のデザインや開発など、プロダクト全体をみていましたね。ただ、難しいのはビジネスとして成功させることです。

――その後は、前職であるITベンチャーに移られます。どのような経緯で転職されたのですか。

その企業の代表に誘われたのがきっかけです。入社してからは、デザインからエンジニアリング、あるいは事業開発も担当していました。いわゆるオールラウンダーとしての活動です。また、在勤中はアメリカにも滞在していました。

アメリカでは、最先端のテクノロジーをレポートしていました。その頃、米国のシリコンバレー界隈で話題になっていた技術がディープランニング(当時は、ディープニューラルネットワーク)でした、

ディープランニングを知ったとき、これまでできなかったことが急激にできるようになると感じました。テクノロジー的にですね。たとえば、人工知能の中で最も難しいとされる「フレーム問題(※)」も解決きるのではないか、と。

具体的には、機械学習の過程で人の手で抽出されてきた「特徴量」と呼ばれる数値の抽出を、自動で行えるようになったのです。このことが、人工知能の研究においては、まさに革新的な変化であったと思います。

※フレーム問題・・・人工知能における重要な難問の一つで、有限の情報処理能力しかないロボットには、現実に起こりうる問題全てに対処することができないことを示すもの。

――その技術を日本に持ち帰り、現在の会社である「株式会社ABEJA」を立ち上げられたのですね。

そうです。「どうすれば世界が変わるのだろうか?」と考えたとき、イノベーション(=当時はディープラーニング自体がイノベーションの源泉になると感じた)を起こすことによって世界を変えようと思うようになりました。創業時は社員2人と私、合計3人でスタートしています。2012年9月のことです。

リアル店舗に“コンバージョンレート”という概念を付加

――御社のビジネスについて、その概要を教えてください。

創業時は、誰もディープランニングのことを知らなかったため、全く売れませんでした。みんな「ディープランニングって何ですか?」という反応で。それで戦略的に、使途を絞り、ディープランニングを活用した製品やソリューションの開発と提供に取り組みました。

その後、いくつかの「PoC(Proof of Concept:プルーフオブコンセプト)(※)」を実施し、様々な領域に適応していきました。その中で、いくつかの有望な領域に絞った結果、小売・流通業にフォーカスして事業展開することにしたのです。

※PoC・・・日本語で「概念実証」。新たな概念やアイデアの実現可能性を示すために、簡単かつ不完全な実現化(または概要)を行うこと。 あるいは、原理のデモンストレーションによって、ある概念や理論の実用化が可能であることを示すこと。

――苦労された点などはございますか。

プロダクトを開発する苦労はありませんでした。それよりも、どうソリューションに仕立てるかが大変でしたね。具体的には、小売・流通業をターゲットとして、いかに汎用的なソリューションを提供できるかという点に苦心しました。

それで生まれたのが、画像解析をもとにした店舗分析です。そもそも小売業は、POSレジでの顧客分析が主流です。ただPOSレジでは、全体で何名の客が来ていて、そのうちの何割が購入しているかまでは分析することができません。

その点、弊社のサービスを活用すれば、来店者人数、来店者属性、店内回遊状況などが解析可能です。ABEJAは、このサービスを「SaaS(Software as a Service:ソフトウェアアズアサービス)(※)」型で提供しています。

※SaaS・・・必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア(主にアプリケーションソフトウェア)もしくはその提供形態のこと。

――導入した店舗では、具体的にどのような効果があったのでしょうか。

多くの店舗では、来店者数を正確に把握できていません。そのため、「店舗のスタッフが感覚値で把握していた数の10倍も来店していた」と判明することもありました。そのように、来店者数の正確な数値が明らかになると、KPIにも影響を及ぼします。

たとえば売上目標を立てるにしても、「来客者数と購買人数から算出した買上率」を設定するなど、より戦略的な目標設定が可能となります。ウェブで言うところの「コンバージョンレート」という概念を持ち込めるようになるのです。

その結果を踏まえて、接客やVMD(Visual merchandising:ヴィジュアルマーチャンダイジング)、レイアウトなどを変えていくことになります。そうすることで、より効果のある対策ができるようになります。

実際に私達が行っているのは、「IoT→ビッグデータ→人工知能」という流れです。IoTデバイスを店舗に設置し、データを収集。そのデータを、ディープランニングを活用した人工知能で解析していくといったイメージです。おかげ様でお客様からも好評です。

世界で活躍する『テクノプレナー』を日本からも

アメリカ、インド、中国など10ヶ国籍 総勢60名のメンバーが在籍。

――現状、組織体制はどのようになっているのでしょうか。

7割がエンジニアです。その中でも、研究・開発・運用をしているチームの人数が最も多いですね。従業員数は60名程度です。ほぼゼロ期から新卒も採用しています。若手のほうがディープランニングへの理解もありますからね。

そして採用の多くは大学などからの紹介です。
採用要件としては技術があればもちろん尚可ですが、基本的には“ビジョン採用”をしています。2017年度からはじめたインターンでは、外国人や海外大学の在籍者ばかり5人も参加してくれ驚きました。

ただ、採用プロセスはかなり慎重にしており、最終責任者は私として、8次面接くらいまで工程を組み実施しています。それだけじっくりとお互いを見極めて採用をしたいからです。

また、社内での私自身の役割としては、いわゆる創業期の何でも屋からスタートして、現状ではCEO兼CTOという肩書で動いています。
フェーズが進んでくるにあたり、当時よりもレバレッジを効かせる活動にシフトしています。

とくに現状では、大きなビジョンをつくることがレバレッジを効かせるポイントになると思っています。
もちろん弊社のサービスのみではなく、新しい技術であるディープラーニングに関する周知活動も大切です。私はそれらに集中しつつ、お客様と一緒になって事業を進めているというのが現状ですね。

――岡田代表のビジョンとはどのようなものですか。

やはり会社としては、“イノベーションを起こす”ということでしょう。すでにディープラーニング、IoT、ビッグデータ、AIなどの技術がありますので、これらを活用し、どのようにして次の社会をつくっていくかが面白いところですね。

我々はこれらの技術により、ほとんど全てのものがひっくり返ると考えています。より根本的な変化が社会にもたらされると。

たとえば自動運転などは分かりやすい例ですが、それに止まらず今後も、大学などと連携しつつ技術を高め社会の課題解決につながるようなソリューションを開発し、イノベーションを起こしていくつもりです。

いずれにしても、テクノロジーを活用し、社会にきちんと実装していくこと。これこそが最も大事だと思います。
人工知能の分野に関わらず、時代とともに変化するテクノロジーをどう社会に適合させられるかが重要なファクターとなるはずです。

経営的とテクノロジーという観点で言えば、よく言うのは『テクノプレナーシップ』というビジョンです。これはテクノロジストとアントレプレナーからできた造語で、海外では普通に使われています。つまり、テクノロジーと経営の融合ですね。

日本ではあまりいませんが、アメリカの起業家ではスティーブジョブズ、ビルゲイツ、イーロンマスクなど、テクノプレナーとして世界的に活躍している人は実はたくさんいます。そのような人が日本でも増えていくことは大事ですよね。

国境を越えるテクノロジーと人


――シンガポールにも法人があるそうですね。設立の背景について教えていただけますか。

ASEANは非常に伸びているマーケットです。とくにシンガポールはASEANのハブ的存在だと思っていて。ですので、ASEAN諸国進出のきっかけとして、2017年の3月に現地法人を設立しました。

体制としては、うちの役員が現地のCEOとして入っています。よくあるように、若手を行かせているのではありません。つまり、それだけ力を入れているということです。現場での決断も迅速ですし。もちろん、現地で採用も実施しています。

――海外展開を進めていくにあたり、どのような点に力を入れていますか。

やはり、日本と海外拠点のコミュニケーションをどう促進させるということでしょうか。とくにガバナンスについては、最終的に承認しているのは誰なのかなど、倫理プロセスに近いところを管理するようにしたいと考えています。

いわゆる人を管理するのではなく、システムを管理するということです。人を細かく管理してしまうと、いずれはお互いが疲弊してしまいます。そうではなく、システムを管理することによって、みんなが伸び伸びと働ける環境を構築したいですね。

――今後についての構想などはございますか。

現状、ABEJA Platformのパートナープログラムに参画頂いている企業とともに、IoT、ビックデータ、AIが結合したプラットフォームを核としたエコシステム形成に力を入れています。具体的には、パートナーを増やすことによって、我々だけではできないことの実現を目指しています。

あとはもちろん、AIというものをより多くの方に知ってもらうことも大事ですね。クラウドという概念が普及したのと同じように、AIをより社会に浸透させていくことがひとつの課題であると思います。

その段階において、AIとソリューションをきちんと分けて考えることが肝要です。ITがなくても売上があがればそれでいい。同様に、AIがなくても売上があがればそれでいいはずです。顧客が欲しいのは、AIでは無くて課題解決のためのソリューション。大切なのは、使いこなせるかどうかでしょう。

ユーザーが抱えている問題を解決するのはソリューションです。そのためにAIが活用できるのであれば活用すればいい。ただ現状では、AIで問題解決を行うためのプラットフォームが存在せず、プレーヤーも少ないために、まずはエコシステムの形成が重要だと考えています。

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