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「気にしているのは上司の評価か、会社のビジョンか」
株式会社BEC
CTO/Co-Founder 黒瀬瑛之


 

※【掲載用】トップ2

Q. 黒瀬様にとって、人生の転機となった経験は?

僕が影響を受けたのは「チーム」との出会いです。僕はスポーツが好きで、高校からアメフト部に所属していました。そこで、みんなで同じ目標に向かって頑張ることの素晴らしさを知ったんです。
大学に入ってからも、勉強そっちのけでアメフトに夢中だったんですが(笑)僕の代は人数が少なく、正直なところ弱かったんです。1部リーグをめざして頑張ってはいたものの、なかなか勝てないので部員のモチベーションも下がっていました。
引退後にコーチもやらせていただいたのですが、うちの大学は年によって強さに波があります。その理由を自分なりに分析したところ、「一部リーグへ行く」という目標への共感が薄くなってしまっていることを感じました。当時、新歓では「楽しいからまずはやってみよう」と勧誘していたので、新入生も勢いで入部してしまうんです。そこで「1部リーグを本気で目指そう」と言われても、あまり実感できない人も多かったんだと思います。

 

Q. チーム内でのビジョンへの共感が薄かったということですね。

そうですね。「これがやりたい」という目標ベースで集まったチームは、やはり強いです。そういうチームの一員として頑張るのは楽しいですし、やりがいもあります。ですから、「社会人になったら、みんなが同じ目標を持ったチームを作りたい」と考えるようになりました。BECは、その思いが形になった会社なんです。

 

Q. 現在はCTOとしてご活躍されていますが、技術との出会いについて教えてください。

きっかけは、幼少期に遡ります。僕の両親は教育熱心で、小学生のころは週8ペースで習い事をしていました。その中で暇を見付けてはやっていたのが、ものづくりだったんです。公園に行くときも、友達と一緒であればサッカーをしたりするんですが、1人のときはずっと泥団子を作っていましたね。あとは当時流行っていたミニ四駆の部品を使い、簡単な自動掃除機を作ったこともあります。本当にものづくりが好きだったので、当時から「エンジニアになりたい」という夢はあったと思います。

Q. インターネットに興味を持たれたのはいつごろですか?

大学で情報工学を専攻していて研究室で「T-Engine」という開発用プラットフォームの組み込み実験をしていたこともあって、プログラムには親しみがありました。そこからインターネットの可能性に興味を持ちWebサービスの勉強をし始めたところ、すごく面白かったんです。ネットの力があれば、小規模なチームでも素晴らしいものづくりができると確信しました。そこで「インターネットを使ってものづくりがしたい」という夢が具体化し、ITのベンチャー企業で働くことを決めたんです。チームでのものづくりの手段とそれが世の中に与えるインパクトを想像して、インターネットに興味を持った感じですね。

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Q. そして、前職のサイバーエージェントに入社されたのですね。

はい。学内の説明会で、サイバーエージェントの人事の方と出会ったのがきっかけです。同社のミッション・ステートメントには、「チーム・サイバーエージェント」「本音の対話なくして最高のチームなし」という文言が盛り込まれています。ビジョンに心から共感でき、さらに技術も身に付けられる。サイバーエージェントは僕にとって、まさに理想の会社だったんです。

 

Q. サイバーエージェントでは、どのような業務に携わっていたのでしょうか。

内定をいただいた後、まずはアルバイトとしてゲーム開発のお手伝いをさせていただきました。ただこの時はエンジニアではなく、プランナーとしてゲームのレベルチューニングや案出しをさせていただいたんです。実際に入社してからも、プランナー兼エンジニアとしてチームに関わることが多かったですね。
その後はより技術的な事を身に付けたいと思い、ゲームプラットフォームのAPIを開発する部署に異動しました。例えば自社のゲームが盛り上がったときに、そのゲームで獲得したユーザーを手放すのはもったいないですよね。そこで複数のゲームでユーザーが行き来できる仕組みをプラットフォームのAPIとして開発して提供していました。最初は「Amebaゲーム」のためのAPIでしたが、途中からは外部のゲームやゲーム以外のサービスと連携するようになり規模がどんどん大きくなっていくのを感じていました。
プラットフォームということでアクセス数も多いですし、万が一止めてしまうと複数のゲームに迷惑を掛けてしまいます。ですから運用面にも気を遣いつつ、細心の注意を払いながら開発していました。

 

Q. エンジニアとして順調に成長される中で、起業を選ばれたのはなぜですか?

やはり「チームを作りたい」という夢を叶えるためです。ただ、社内でチームを作るか、起業するかが問題でした。先ほども申し上げた通り、サイバーエージェントはチームを重視した社会です。それぞれのチームが1つの会社のように自立して、プロジェクトを進めています。ですから、その中の1つとしてチームを作るという選択肢もあったんです。
結果的にBECの創業に至ったのは、自分が所属するチームだけでなく世の中にそういうチームを増やしていきたいと思ったことと、そのタイミングで共同創業者の高谷(高谷元悠/株式会社BEC CEO/Co-Founder)が声をかけてくれたことがきっかけです。僕らは当時、起業志望者のシェアハウスで出会ったルームメイトでした。そしてある時、高谷がサイバーエージェント主催のビジネスコンテストで優勝したんです。「一緒に起業しないか」と誘いを受け、チームを作る夢を打ち明けたところ、「そういう世の中にしていきたい」「そのための会社にしていきたい」という話でかなり盛り上がったんですよね。
しかも、このビジネスコンテストで高谷のチームについていたメンターは、僕がずっとお世話になっていた方だったんです。そこで起業について相談したところ、「応援するよ」と背中を押してくださいました。そのことも追い風になり、サイバーエージェントを辞めてBECを立ち上げることにしたんです。

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Q. お2人が描いた、BECのビジョンについてお聞かせください。

弊社のビジョンは「挑戦者を増やす」です。「お金がいるから」「家族がいるから」と仕方なく働いている人は多いと思いますが、そんな働き方をしていても苦しいだけです。ビジョンに心から共感できる会社で、本気で「やりたい」と思える仕事に取り組むのが本来の働き方だと思います。
ハードルになっているものを取り除き、1つになったチームをどんどん世の中に作っていければ、自然とそういう働き方が広がるはずです。そのためのサービスを提供し、本当にやりたいことに「挑戦」できる人を増やす。それが、僕たちのビジョンなんです。

 

Q. そのビジョンに基づき、どのような事業を展開されているのでしょうか。

2014年より、バックオフィス自動化ツール「Gozal」というサービスを提供しています。主なターゲットは中小企業の方や、これから起業しようと考えていらっしゃる方です。
会社を立ち上げるときには、いろいろなバックオフィス業務が発生します。税金や保険の届け出、給与の計算、商標登録、利用規約の作成など、やるべきことが山のようにあるんです。しかし、それらはビジネスの本質とは関係のない業務ですから、労力を割くべきところではありません。そこですべてのバックオフィス業務を自動化するのが、「Gozal」です。
システムについて簡単にご説明させていただくと、「Gozal」にユーザー登録して必要な情報を入力しておくと、やるべきタスクが自動で通知され、それを順にやっていくだけで、バックオフィス業務がもれなく完了できるという感じです。

 

Q. バックオフィス業務の全自動化は、士業の方々の負担軽減にもなりますよね。

おっしゃる通りです。もともとこのビジネスは、公認会計士だった高谷が考案したものです。バックオフィス業務は煩雑で手間がかかることもあり、これまでは専門家の方々に手続きを丸投げする方がほとんどでした。しかしそうなると、専門家の方々は事務作業に追われてしまい、本業に力を入れることができません。
しかし「Gozal」では、それらの業務が自動化されています。お客様は簡単にタスクをこなすことができるので、専門家の方々は書類の最終チェックや商標登録、特許取得に関するご提案など、その方にしかできない業務に集中していただけるんです。
専門家といわれる士業の方々は、お客様のビジネスを加速させるノウハウをお持ちです。その価値を存分にお客様に提供していただければ、世の中のビジネス全体がより良くなるはずです。その世界観を作るため、日々「Gozal」の開発に力を入れています。

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Q. 「Gozal」開発の現状と、今後の展望をお聞かせください。

想像以上に大変です(笑)バックオフィス業務は、「この場合はこうだけど、この場合はこう」という分岐がものすごく多いんです。開発サイドはそれらをすべて整理して、自動化しなくてはいけません。幸い分岐についてはプログラミングが得意とするところなので、お客様を混乱させるような情報は見せず、スムーズに使っていただけるよう工夫を凝らしています。それこそ専門家の方々にもご協力いただきながら、ひたすら業務の自動化を進めている状態ですね。バックオフィスによってビジネスが加速するような基盤を作り、ゆくゆくは世の中に起業家という「挑戦者」を増やしていくことが目標です。
その中で僕がCTOとしてすべきことは、技術の仕組みをしっかり理解しておくことです。さまざまな技術の本質を理解し、プロジェクトが本当に実現可能かを判断する。そして、もし夢物語だった場合は修正する。それは今までもこれからも、僕の役目だと思います。

 

Q. 開発環境、技術選定基準について詳しく伺ってよろしいでしょうか。

現在の開発環境は、インフラはAWS、監視ツールはZabbix、インテグレーションツールはJenkinsです。言語はメインプロジェクトはJava、あとはGoやRubyなどを適宜使い分けています。
技術選定の基準は、プロジェクトとの相性です。例えば「Gozal」の場合、以前はJavaのフルスタックフレームワークであるSpringを採用していました。しかし管理ツール化するにあたって、シングルページでフロントに処理を持たせる設計と相性がいいと感じ、フロントにAngular.js、サーバーサイドはシンプルにJavaEEでAPIのみの設計に一新しました。最終ビジョンがあるプロジェクトなら長期的な視点で技術を選んだり、そうでなければ流行りのものを選んだりと、ケースバイケースで選定するようにしています。
言語も同様に、プロダクトを運用していく上でベストなものを選ぶようにしています。Javaはドキュメントの自動生成周りのライブラリが豊富ですし、何より情報系の人なら慣れ親しんでいる言語です。ですから今後開発陣を増やしても、Javaであれば順応しやすいと思い選びました。
ただ、「JavaしかできないからJava」という感じにはしたくありません。ですから管理ツール等の周辺環境に関しては、いろいろな技術を積極的に導入するようにしています。そうすれば、次のプロジェクトが始まるときに技術の選択肢が増えますよね。

 

Q. 開発チームをはじめ、社内の体制はどのようになっていますか?

開発チームは、アルバイトを含めて10名くらいです。人数が増えてきたので、開発ルールや運用体制などのルール化を進めています。最終的には、僕の手がなくてもどんどんタスクを追加できるようにするのが目標です。
ただ、ルールは目的のために必要だと思った時に作るだけで、絶対的なものにはしません。むしろ組織全体のマネジメントとしては、ルールは作らないようにしています。それこそ、「朝10時に出社しなくてはいけない」というルールはいらないと思うんですよね。一応始業時間は10時ということにしてるんですが、守る必要はありません。ミーティングや来客の予定がなければ、自由に働いてくれていいと考えています。
人それぞれに合った働き方がありますから、自分が会社のためにベストを尽くせる方法を選んでくれればいいんです。朝眠いのに無理に出社する必要も、眠気を我慢して働く必要もありません。そんな状態で仕事をしても効率が落ちますし、そもそも無理な働き方というのは目標のためではなく、人目を気にして仕方なくすることです。それなら遠慮せず仮眠を取り、自分が一番力が発揮できるタイミングで働いてほしいと考えています。
さらに今は「自分の給料は自分で決める」ようにしています。そうすることで、従業員一人ひとりが会社や自分のことを自立して考えられるようになると思っています。

 

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Q. 非常にユニークな方針ですが、皆様の反応はいかがですか?

驚かれることが多いです(笑)学生さんにも「会社は時間を守るもの」という意識が浸透しているようで、みんな最初は面食らっていますね。「5分遅れます」ときちんと連絡をくれたりするのは好印象なんですけど、やっぱり今にも寝そうなのに頑張って働こうとする子もいるんです。おそらく、「会社で寝てはいけない」という固定概念があるんでしょうね。給料のことに関してもそうですが、あまり会社が従業員のことを管理しすぎると、従業員が上司の目ばかり気にするようになってしまい、目標に向かう意識が薄れてしまうと思うんです。
弊社のメンバーは今のところ、紹介で入社した人しかいません。ビジョンに共感してくれることを大前提に、サイバーエージェントと同じく「素直でいい人」を集めています。会社のルールがない以上、チームとしてやっていくためには「信頼」が大切です。どんな状況でも「ビジョンのために動いてくれている」「本人にとって一番力が出せる時間帯で働いている」と信じられるメンバーでないと、いずれうまくいかなくなります。その信頼感を持つためにも、「素直でいい人」というのは重要な条件なんです。
それに、「素直でいい人」は柔軟です。「ルールがない」ということも素直に受け止め、すんなり適応してくれます。弊社のように自由度が高い会社は、柔軟で素直な人には働きやすい環境でしょうね。

 

Q. エンジニアの教育について、黒瀬様のお考えをお聞かせください。

基本的には、本人のレベルより少し上の仕事を任せるようにしています。「難しいことができた」という成功体験があれば、人はどんどんチャレンジできるようになるからです。それこそ弊社のビジョンでもある「挑戦者」として、世界を広げていくことができます。
しかし、会社や上司に依存していては成功体験はできません。自分で考え、自力で答えにたどり着くことで初めて自信がつくんです。ですから、僕は最後まで答えを教えません。アドバイスをすることはあっても、最終的な答えは自分で導き出してもらいます。
いずれはメンバー全員が自立し、思い描いたことを実現できる組織体にしたいですね。みんなが「自分は何でも作れる」と自信を持てるよう、個々が成長できる環境を作ってあげたいです。

 

Q. ありがとうございました。最後に、活躍を志す若者へのメッセージをお願いいたします。

エンジニアリングをする上でもっとも重要なのは、「ビジョンに共感していること」だと思います。特にエンジニアは、コーディングによってサービスの総仕上げをする立場です。だからこそ、ビジョンへの思い入れがサービスにはっきりと表れます。「ここは適当でいいか」と1つ手を抜いたが最後、1の妥協が100の妥協に膨らみかねません。
ビジョンにこだわっている人は、ものづくりにも妥協しません。「Gozal」であればバックオフィス業務について徹底的に理解し、ユーザーの使いやすさを考えたものづくりをします。その努力の積み重ねによって、より良いサービスが提供できるようになるのです。
CTOなどの肩書きは、そこまで気にする必要はありません。僕個人の考えでは、プログラミングなどのスキルも手段でしかないと思います。エンジニアにとって何よりも大事なのは、「本当にいいものを作れること」です。ぜひ心から共感できるビジョンを見付け、同じ目標をめざす人たちとチームを作ってください。そうすればきっと、この上なくやりがいのある仕事ができると思います。

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