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エンジニアもCTOもクリエイティビティが求められる楽しい仕事
株式会社VOYAGE GROUP 執行役員CTO 小賀 昌法

■略歴 
1971年北海道帯広市生まれ。1992年釧路工業高等専門学校卒業後、NECネッツエスアイ入社。その後、Yahoo! JAPAN、トランスコスモスなどを経て、2010年1月VOYAGE GROUPの100%子会社fluctにエンジニアとして入社。入社3カ月後同社CTOに、さらに3カ月後にはVOYAGE GPOUPのCTOに就任。事業開発会社としてのエンジニア文化を根付かせるため、採用・育成・評価戦略などの様々な仕掛けを構築・運用している。CTO以外にも、サービスインフラおよび社内インフラを構築・運用しているシステム本部長や情報セキュリティ委員長も兼務している。
 

エンジニアとして入社し、わずか半年でグループ全体のCTOに

■VOYAGE GROUPに入社されたのは2010年とうかがっています。入社までの経緯を教えていただけますか。

小賀氏:VOYAGE GROUPの優秀なエンジニアが勉強会を始めると聞き、社外から参加したのがきっかけです。勉強会終了後に社内に併設されているバー「AJITO」でメンバーと飲みながら話をしました。その時、「この会社にはいいエンジニアがいるし、皆いい顔で働いているな」と好印象を持ったんです。後日、社長(宇佐美進典代表取締役社長兼CEO)と会う機会をセッティングしてもらい、入社につながりました。

 

■エンジニアとしての入社でしょうか?

小賀氏:そうです。アドテクノロジー事業立ち上げの時期でしたから、アドテクがメインの子会社fluctにエンジニアとして入りました。そこで評価していただき、3カ月後に同社のCTOに就任し、さらに3カ月後にはVOYAGE GROUPのCTOという役職を頂きました。

 

■すごいスピード出世ですね。

小賀氏:勉強会を通じてエンジニアと交流があり、入社時点である程度の信頼関係を築けていたことが大きかったと思います。ありがたいことに宇佐美からは、いろいろな分野の裁量をまかされています。5年以上、同じ経営陣で仕事をしていますが、良いところも悪いところもお互いにわかった上で、それでもいっしょに働いていきたいと思える関係ですね。

 

■CEOとCTOの良好な関係は会社にとってもプラスになると思います。あらためて御社の事業内容を教えていただけますか。

小賀氏:VOYAGE GROUPは事業開発会社で、現在は、アドプラットフォーム事業とポイントメディア事業を2本柱に、第3の柱となる事業を作るべく、HR領域やEC領域、FinTech領域を強化領域とするインキュベーション事業を展開しています。元々は、インターネットメディア事業の立ち上げから始まった会社で、毎日数十万人というお客様に使っていただける信頼性の高いメディアを構築し、「ECナビ」「リサーチパネル」「PeX」などに代表されるポイントメディア群を9〜12年という長期にわたり運営しています。ポイントメディア事業のおかげで広告のマネタイズのノウハウが蓄積されましたので、それを活かそうと2008年から始まったのがアドプラットフォーム事業です。今ではSSP「fluct」をはじめとするさまざまなプロダクトを取り揃えており、お客様からご好評を頂いています。

 

■ポイントメディア事業とアドプラットフォーム事業が柱とのことですが、新規事業にも積極的ですね。

小賀氏:おっしゃるとおり、新規事業もどんどん立ち上げています。学生向けの就職支援サービス「サポーターズ」がその代表格ですね。弊社の特徴は一つの大きなサービスをメインにするのではなく、15の子会社とともにユーザーのニーズに合わせた課題解決サービスを開発し、それらを組み合わせて運営している点だと思います。

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採用・評価・育成に社員を巻き込みグループの一体感を作り上げる

 

■グループの規模が大きいと、全体としての一体感を持たせるのが大変ではありませんか。

小賀氏:そうですね、経営陣の一人としてグループ全体の一体感を持たせる難しさは感じています。また、各事業の特色を踏まえた上でVOYAGE GROUPのエンジニア文化をどう育てていくかは、永遠の課題といっていいかもしれません。弊社の強みは、メディアやアドプラットフォームをしっかりと作り込める優秀なエンジニアの存在、そのサービスを改良しながら長期に継続させている実績、並行して新しい事業にもチャレンジできるマインドです。この地道なものづくりとチャレンジを両立させながら、グループ全体の一体感を高め、発展にもつなげていきたいと考えています。

 

■そのための具体的な取り組みはありますか。

小賀氏:「採用」「評価」「育成」の3つです。VOYAGE GROUPとしての一体感を持たせるために、この3項目の仕組みを整備して、そこに社員を巻き込んでいこうと考えています。社員自ら、自分がどういう基準で評価されたいのか、どんな人材が欲しいのかなどを考える。皆が採用・評価・育成の視点を持つことで求めるエンジニア像が明確になり、社内に浸透していく。結果、グループ全体のエンジニア文化が根付く。そう考えています。

 

■特に評価方法が独特だとうかがっています。詳しく教えていただけますか。

小賀氏:例えば、「技術力評価会」という仕組みがあります。VOYAGE GROUPでは実績と能力は別軸で評価しています。技術力評価会は能力評価の仕組みです。評価のポイントは「エンジニアは欲しいと言われたものをそのまま作るだけが仕事じゃない」ということです。「お客様やプロデューサーが『この機能が欲しい』と言ったから」ではなく、自分の作るサービスに対して、何が必要か、どう使われるのか、どんな価値を生み出すものなのか、自分の頭で考えているかどうかを見ます。ですから、成果物だけを見るのではなく、成果物を通してそれを作ったエンジニアの考え方を引き出し、評価します。新しく施策を始める時には仮説を立てますよね。その仮説がうまくいってもいかなくても、その仮説を事後に検証することが大切なんです。たとえ施策がうまくいかなくても「この失敗を次はこう生かしていきたい」という説明ができれば、プラス評価になります。

 

■興味深い評価方法です。採用や育成においてはいかがですか。

小賀氏:採用も基本的には同じです。漫然と経歴を聞くのではなく、なぜそれを作ったのか、どうしてそういう作り方をしたのか、それによってどんな価値が生まれたかを聞き出します。育成も同様です。皆で意見を出し合いながら、エンジニアとして大切にしたいことを抽出し、それに合わせた教育プログラムを考えていきます。

 

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実績と能力を適正評価することでエンジニアのチャレンジ文化を伸ばす

 

■実績だけでなく、その背景にある考え方や過程も重視するのはなぜでしょうか。

小賀氏:ビジネスには当たり外れがありますよね。つまり、いい働きをしたからといってビジネスとしていい結果が出るとは限らない。反対に、普通のことをしていても時流に乗ればビジネスが伸びる時はあります。いい時も悪い時も、能力まで見て評価するのが大事なんです。チャレンジすればするほど失敗も生まれます。その結果だけでマイナスの評価をされるとチャレンジ精神は萎縮してしまうし、チャレンジングな人材の採用も難しくなる。逆に、ビジネス面での実績だけでなく、本人の純粋な能力やその時の考え方まで評価してあげられれば、エンジニアが臆することなく挑戦する文化が育つはずです。弊社の経営理念は、「360°スゴイ」という創業時からの想い「SOUL」と8つの価値観「CREED」から成ります。全社でチャレンジする気風を育てなければ、この理念を具現化することはできません。採用・評価・育成を重視しているのはそのためです。

 

■御社にとってはそれほどまでにチャレンジの文化が重要なのですね。

小賀氏:変化し続けるインターネットの世界で仕事をするエンジニアにとっては、新旧の入れ替えに慣れることが何より必要です。この仕事を続ける限り、リファクタリングやバージョンアップは絶えず続けなければなりません。歴史あるメディアだからといって古い技術を使ったまま運営し続けると、後々困った事態に陥ることもあります。また、ビジネスを成長・発展させていくためにも、新しい技術を取り入れることが必要です。ただ、エンジニアには、「チャレンジは独りよがりなものではなく、ビジネスの成長につながるものでなければいけない」とも言っています。

 

■「チャレンジには経済性が伴わなければならない」というのは大切な視点だと思います。小賀さんは入社前、どのようなお仕事をなさっていたのでしょうか。

小賀氏:最初に勤めたのは受託開発も行う会社でした。いいコードをかければOKという段階から、営業といっしょにお客様のところへ行きお客様が望むものをきちんと作るという段階に進み、さらに問題が起こった時のサポートまでを品質と考えるならお客様の言われるがままに作るだけではいけないと学びました。次に転職したのがYahoo! JAPANです。B2B系事業部のエンジニアとして、日本ナンバーワンといわれたポータルサイトの中のテクノロジー、アーキテクチャーに直接触れる貴重な経験をしました。インターネットサービスをどうやって運営していくかも、この時代に学びました。その後、自分たちで会社を立ち上げたり、それがうまくいかずフリーランスで活動したこともありました。

 

■その豊富な職歴をふまえて、VOYAGE GROUP入社後に特に意識していたことはありますか。

小賀氏:早く試す、ということでしょうね。早い段階で試してみて、フィードバックを受け、改善するという体制づくりを意識していました。理論だけではうまくイメージが持てないから、まずは試してみたいんですよね。でも裁量がないと自由に試すことさえできない。ですから、関係者に説明して理解してもらい、信頼を積み重ねて裁量を頂く。そして、試して改善することを繰り返して成功確率を上げてきました。また、一つのやり方に固執せず、大事なことは共有しながらも多様性を受け入れ、その時々のチームのスタイルも大切にしてきました。いろんな成功事例があったほうが組織としては強いですから。

 

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現状の把握にもっとも時間をかけそれに見合う未来を描くのがCTOの役割

 

■小賀さんの考えるVOYAGE GROUPのCTOの役割を教えてください。

小賀氏:経営陣の一人として、会社をどのような方向にもっていくかを中長期で考えることだと思います。「絵に描いた餅」ではなく、現状を理解した上で、既存事業の延長線上の未来を想定するようにしています。特に現状の把握にはもっとも時間をかけています。そこを間違うと、とんでもない方向に進んでしまいますから。的確な現状把握によって適切な未来を描けたら、あとは進むべき方向を発信して皆でやるだけです。優秀なエンジニアがたくさんいますから、技術的なところは彼らにまかせればいい。彼らがチャレンジしやすい環境をつくっていくのが私の仕事であり、チャレンジです。

 

■エンジニアと経営者の視点を両立させることに難しさを感じることはありませんか。

小賀氏:ありますね。経営には攻めの要素が必要です。頭のねじが一個外れているのではと思わせるほど、多少のリスクは意に介さない姿勢やスピード感が必要な時もある。エンジニアはどちらかというと守りの思考です。常にリスクを見ながら、問題が起こった時にどう振る舞えばいいか、いろんなケースを考えています。ですから経営者とエンジニアの両立には難しさを感じます。この点を克服するには、頭の切り替えを意識する以外にないでしょうね。ふだんからエンジニア以外の人と接する機会を作ったり、アイデア出しに特化した時間を設けたりするようにしています。

 

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■頭の使い方以外に、CTOになるために必要なことはありますか。

小賀氏:自分の中から出てくる興味や好奇心、いわゆる内発的動機があるかどうかじゃないでしょうか。エンジニアであっても、マネジメントに興味をもったらやってみるといいですよ。私はやってみて面白かったので。そして、やりたいと思った時にすぐに実行できるよう、普段から信頼を積み上げておくことも大事だと思います。

 

■なるほど。小賀さんが今後挑戦したいことを教えていただけますか。

小賀氏:今後、いろんなものがますますインターネットとつながり、ソフトウェアで制御され、クラウドに種々雑多なデータがたまっていくことは間違いありません。そうなるとエンジニアやデータ分析のスキルをもつ人材に対するニーズが一層高まります。エンジニアとして一人でできることは限られているので、優秀なエンジニアを育てる環境づくりに引き続き力を入れていきたいですね。そして彼らと共に、「VOYAGE GROUPがまた新しいものを出すらしい。楽しみだ」と言われるようなサービスを世の中に送り出していきたいと思います。

 

■最後に、CTOやエンジニアを目指す方々にメッセージを頂けないでしょうか。

小賀氏:CTOもエンジニアも非常にクリエイティビティが求められる楽しい仕事なので、ぜひ挑戦してみてください。このインタビューサイトにも私以外のCTOが出てきますが、昔と違い、今はエンジニアのロールモデルになり得る人がたくさんいます。そういう人たちとつながりながら、チャレンジを続けてほしいですね。