COOもCEOもゴールではない。貪欲に上を目指す 株式会社fluct 代表取締役兼COO 土井 健

fluct COO

■略歴
大阪府生まれ。2008年同志社大学商学部卒業後、株式会社サイバードに入社。モバイル広告代理店事業立ち上げに従事し、年間全社MVPなど多くの賞を受賞。2011年に株式会社ECナビ(現:株式会社 VOAYGE GROUP)に入社。 株式会社 adingo(現: 株式会社
fluct)に出向し、いちメディアコンサルタントとしてスマートフォンSSP「fluct」の立ち上げに参画。その後、本部長、取締役などのレイヤーで事業成長に大きく貢献し、2016年株式会社fluctの代表取締役兼COOに就任。
親会社である東証一部上場の株式会社VOYAGE GROUPにおいても、2014年10月より最年少でBOARDメンバーに就任し、株式会社intelish、株式会社メディア・ヴァーグなどの社外取締役を兼任。

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5歳でカレンダーを売りお金を稼ぐ

――まずは土井さんの、幼い頃のお話をお聞かせ願えますか。
飲食業を営む家で生まれ育ったこともあり、幼い頃から商売っ気というか、お金を稼ぐことに対する興味がありました。私は覚えていないのですが、両親からよく聞かされるのが、就学前の4,5歳頃のエピソードです。お菓子を食べたいと思ったのですが、もうお小遣いを使ってしまっていて手元にお金がない。さて、どうやってお金を稼ごうかと考えていると犬・猫の写真が印刷されたカレンダーがあって年末だったのでちょうど捨てるところでした。そのカレンダーをもらい、犬・猫の部分だけをハサミで切り取って、道端で1枚100円で販売していたようです。(笑)

――就学前の子どもが道端で商売とは驚きですが、売れたんですか?
売れたようです。小さい子どもが商売している物珍しさの部分が大きかったと思いますが(笑)。そういった意味で両親にはとても感謝しています。お金や物を安易に与えず、手に入れるにはどのような努力をすればよいかという、現在のビジネスに通じる根幹の部分を、幼少期に育むことができましたから。両親は商才というか馬力もかなりあって、現在も飲食業を手広く展開していて、今でも心から尊敬しています。

――ご両親にビジネスの基礎を教わったのですね。ところで、ご実家を継ごうとは思われなかった?
10代の頃は思っていました。将来継ぐんだろうなーって。しかし、インターネットの世界に飛び込んでからは、この世界が楽しくなってしまい、ごめんやけど継がないよっていうのを両親に言いました。理由はいくつかあります。小資本でもビッグビジネスにチャレンジできること。飲食ではそうはいきません。そして何よりこの業界で働いている人の雰囲気も心地よかった。優秀な人が集まっているし、目まぐるしく状況が変わるこの独特のスピード感も自分の性に合ってると感じました。

――それで大学卒業後は、インターネットサービスを提供するIT企業に就職されたのですね。
前述したのは就職してからの話でして、就職活動は、「若いうちから責任のある立場で大きな仕事をできるかどうか」「(その会社にいる人が)仕事を心から楽しんでいるどうか」「成長産業であるか」という点を基準に就職活動を行いました。結果として、実力があれば年齢に関係なく、抜擢されるベンチャーが自分にあっていると判断して最初の会社を選びました。

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社会人スタートはビリから

――社会人のキャリアはどういった職種からだったのですか。
当時流行っていた「i-mode」のゲームや占いといったモバイルコンテンツをメインに手がける企業に就職し、その中の新規事業であるモバイル広告代理事業の顧客開拓の営業職に就きました。テレアポはもちろん、メール、手紙なども使って中小企業経営者などに積極的に営業をかけ、サービスの説明、クロージングまで行っていました。

――当時から優秀な営業マンであり、ビジネスパーソンだったのでしょうね。
いえ、まったく。自分と同じ部署の営業に配属された新卒同期が7名いたのですが、その中で初受注が一番遅かったんです。営業成績にシビアな事業部でしたから、毎日40名くらいいた営業全員の成績を印刷して部署100人くらいに配るんです。初受注までの約2ヶ月は自分の「0円」という営業成績を見る度に、プレッシャーで押し潰されそうでした。ただ今にして思えば、キャリアスタートでうまくいかなかったのは、結果的によかったと思っています。

――それはなぜでしょう?
入社時期にすごく大口を叩いていたのですが、それは只の去勢で、自分にはまったく何の能力もありませんでした。その頃の私は、PowerPointの存在すら知らないレベルでした。プレゼン資料もWordで作成し、口頭でなんとか頑張るといったひどい有様。大学時代に勉強せず遊んでばかりいたツケが回ってきました。ただ、私は折れませんでした。同じ事業部の同志社の先輩でフォローしてくれる優しい人もいたし、「大きな受注をとりたい」「やるからには1番になりたい」という強い思いで、がむしゃらに努力し続けました。そうすると徐々に営業のコツも覚え、成果もではじめて、営業手法や仕事の時間配分、継続的に成果を出すための方法など自分のスタイルが確立していきました。スタートダッシュで大いに苦しんだことは本当に良かったと思います。

――圧倒的行動量をこなすことにより、自分の営業スタイル構築につながっていったのですね。
そうですね。企画やエンジニアなど周りの多大なサポートもありまして、3年目には圧倒的数字で部署内のトップセールスを1年間キープするまでに成長しました。しかしその結果を出したあと、入社当初に描いていたキャリアアップは望めなかった。「あれ、自分がイメージしていた姿と違うぞ」と、転職を考えるようになりました。

――それで、現在のVOYAGE GROUPに転職されたわけですね。決め手はどこだったのでしょうか。
実際、若くして上のポジションで活躍されている方が、VOYAGE GROUPには大勢いたことがまず一つですね。ただ、それだけではありません。組織のメンバー全員が、とにかく楽しそうに仕事をしていた。事業の将来性や会社の価値観を、自分の夢のように語ってくれました。「このメンバーと一緒にここで働きたい」そう、思いました。

――VOYAGE GROUPは、世界最大級の意識調査機関「Great Place to Work®」が選ぶ「働きがいのある会社」従業員100-999人の部門で、15、16、17年年と3年連続トップを獲得していますものね
ありがたいことに3年連続「働きがいのある会社」1位に選出されました。私がVOYAGE GROUPに入社した頃は、携帯電話がフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)からスマートフォンに移行するタイミングだったこともあり、スマートフォン向けのSSPサービスの立ち上げに、いちコンサルタントとして参画しました。その後、リーダー、本部長、取締役を経て代表取締役兼COOに至ります。

――ところでSSPも含め、御社のサービスを簡単に説明していただけますか。
SSPとは、インターネット広告を効率的に配信する仕組み。Webサイト、スマートフォンアプリなどインターネットメディアの広告収益最大化を目的としたプラットフォームであり、当社の主力事業です。おかげさまで現在、当社は売上で国内SSPのトップシェアを誇るまでに成長しました。当社のSSPサービスを利用するメディア数は1万サイトを超え、インプレッション数(広告表示回数)は月330億以上。年間売上は100億円を突破する規模にまで成長しました。

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CEOが種を見つけCOOが育てる

――それでは改めて、COOとしての役割をお聞かせください。特にCEOとの事業分担などをお聞きしたく存じます。
企業によってさまざまだと思いますが、当社においてはCEOとCOOの役割は明確に分かれています。そのおかげもあり、事業がスムーズに進んでいると感じます。COOである私の役割は、既存事業に関するあらゆる業務です。判断、承認、執行など。戦略も考えますし、メンバーのマネジメントも全て基本的にはすべて私が行っています。

――では古谷CEOは、どのような業務を行っているのでしょう。
新規事業の開拓です。アメリカで流行っていたSSPサービスを、当社が手がけるようになったのは古谷の先見の明があってこそ。ビジネスの種を見つける嗅覚がとても優れている人物だと、尊敬しています。

――つまり古谷CEOがゼロイチの部分を担い、その後のビジネスの成長は土井さんが担うわけですね。

はい。古谷は0から1を生み出すのが得意で、私は1のビジネスを10や100にする方がが得意です。またいい意味で性格が正反対なことも、2人がよきバランスを保っている理由だと思います。私は結構細かいですが、古谷はいい意味で大雑把。古谷はほとんど怒りませんが、私はときには怒ることもあります。

常に上を目指し努力する

――それではCOOというポジションも含め、現在のお仕事に対する姿勢や大切にしていることお聞かせください。
どんなに上のポジションにいっても、決して満足しないように心がけています。「今の自分があるのは、単なる運やまわりに恵まれたから。自分は凡人なのだから、もっと努力しないと」と自分に言い聞かせています。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の精神を胸に、決して立ち止まることなく、常に上を目指す努力を行っています。また組織の上にいる者がこのような姿勢でいなければ、会社の未来はないとも考えています。とはいえ理想には程遠く、自分自身まだまだだなと感じる日々です。

――常に努力をするという姿勢は、メンバーにも伝えているのでしょうか。
「私はたまに怒ることがある」という話に繋がりますが、まさにそこの部分です。ビジネスセンスや能力があるにも関わらず、現状に満足し、高みを目指さないメンバーには叱咤も含め、厳しくマネジメントします。もちろんメンバーの性格を考えながらですが。

――実際に、そのようなメンバーを見てきたんですね?
「満足度のしきい値」とでも説明したら分かりやすいでしょうか。そのしきい値を広げていくのが、上に立つ者としての役割だと思いますし、組織が成長する上でも重要な要素だと考えています。
たとえばこんなメンバーがいます。入社当時の力量は、正直、それほど高いレベルではありませんでした。けれど常に現状不満足で自分の成果に満足せず、ひたむきに努力を続けた。約6年間。今ではVOYAGE GROUPのトップ営業として、表彰されるまでに成長しています。

――なるほど。そして土井さんはおそらく、そのメンバーに寄り添い、サポートしていたのでしょうね。
ただ御社は現在100名ほどのメンバーがいます。一人ひとりの面倒を見るのは難しい規模に成長しました。
おっしゃる通りです。20名程度までのマネジメントであれば、直接指導できますし、自分の仕事振りを見てもらうことで、言い方はあれですが、背中を見て自然に育っていく。しかし30人を超えるあたりから、そのやり方では難しくなることも、これまでのマネジメントで経験しました。当然、100人全員をマネジメントするのは不可能です。そこで重要なポジションにいるメンバー鍛えることに、現在は注力しています。

――大勢の人材をマネジメントしてきた土井さんから見て、成長するタイプというのは、どのような人物なのでしょう。
大事なのは2つあると考えています。1つ目は成功するまであきらめず、持続し続けることができるか。2つ目は結果に繋がる適切な努力ができるか。実際当社で上のポジションに就くメンバーは、能力に加え、継続的に努力しています。年齢や性別はまったく関係ありません。最近は女性の活躍が目立ち、リーダーや部長職に就く者も出てきています。

――その他、マネジメントで意識されていることはございますか。
もう2つありまして、1つ目はマネジメントの「総量と配分」という考え方です。限られた時間を誰にどれだけ割くと組織全体が強くなるか、良い方向に向かうかを意識しています。2つ目は目指すべき方向性を出来る限り明確にするよう心がけています。メンバーが増えていくと、どうしても全員が向いている方向を合わせるのが難しくなってきます。そんなときにトップがブレていたら、みんな戸惑うでしょうし、不安になりますからね。

――ただベテランエンジニアなど、失礼ですが特定の分野で土井さんよりも豊富なキャリアを持つメンバーが違う方向を見ていた場合は、どうするのでしょう。
私が間違っていないか、まずは再考します。考えに考えた結果、メンバーの方向性が正しければ、そちらに軸を修正することもあります。ただ私の方が正しいと思った場合には、経験や年齢は関係ありません。一人のスーパースターに迎合して組織を作ることはすごく危険だと考えているので、会社のトップに立つ者として、はっきりと伝えています。

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圧倒的トップシェアを目指す

――それでは、今後のビジョンや展望をお聞かせください。

おかげさまで当社はSSP事業において、日本トップクラスの企業に成長しました。ただ、今までの成功は一度全部忘れて、さらに売上を伸ばし、同事業で圧倒的なシェアを獲得するために色々と新しい取り組みをはじめています。
現在当社の売上はVOYAGE GROUPのおよそ半分を占めていますが、より事業成長すれば、VOYAGE GROUP全体のさらなる成長に繋がります。

――2016年10月、土井さんは代表取締役に就任、古谷CEOとダブル代表になられました。この人事も、組織としてさらなる高みを目指す表れなのですね。
SSPとしては国内初のサービスである「fluct Direct Reach」などはいい例です。当社は「メディアの成長を共創する」というミッションを掲げています。しかし、最近はメディアサイドの不透明性や質なども業界全体として問われるようになって来ていると感じています。「fluct Direct Reach」は従来のフローとは異なり、広告主は直接当社のSSPに広告が出せる仕組みです。それによって、広告主サイドへの透明性を高め、結果としてメディアの収益向上を実現できるのではないかと考えております。
そのほか、既存の延長線上だけでなく、広告以外の手段でメディアの成長を共創するサービスも検討していますし、海外進出も視野に入れています。

――まさに本日お話しくださった通り、貪欲に上を目指していくと。では最後に、経営者やCOO目指すビジネスパーソンにメッセージをいただけますか。
自分自身まだまだなので、偉そうに語るのは甚だ恐縮ですが、現状に満足しないこと、自分自身の満足度のしきい値を広げていくこと。CEOやCOOがゴールではないので、今よりさらに良くなるように、さらに上にいけるように、といった貪欲さをもつことが重要だと思います。