最高執行責任者(Chief Executive Officer) への道のり

「CEOはボスではなくてパートナー」
株式会社CIN GROUP
専務取締役COO 梅本翔


 

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■略歴

関西大学社会学部卒業。2004年、在学中からインターンをしていた合資会社ディースパークに入社し、営業本部長取締役まで務める。2010年に現CIN GROUP代表取締役である篠宮氏と共に株式会社リブレットを設立。2012年、グループ会社をホールディングス化するために、株式会社CINホールディングスを設立し、専務取締役COOに就任。子会社の代表取締役も兼任。

 

Q:梅本さんは学生時代から、COO的な気質をお持ちだったのでしょうか。

  そうですね。私はもともと、中心に立つよりも裏から補佐をすることにやりがいを感じるタイプでした。ですから生徒会の副会長など、学生時代から補佐役に回ることが多かったですね。

 ただ、キャプテンと副キャプテンは役割が違うだけで、どちらがリーダーシップを発揮しても問題ないと考えています。ですから、状況によっては立ち位置を切り替えるという選択肢もありますね。実際に今年3月までは、リブレットという会社の代表取締役を兼任していました。

 

Q:リブレットさんは御社の前身でもある会社ですよね。ご経歴と併せて、設立の背景を伺ってもよろしいでしょうか。

  私は大学在学中から、ディースパークという大阪の人材派遣会社に勤めていました。立ち上げ直後で社員は7名ほどでしたが、ちょうど接客業の人材派遣が解禁された頃で、まさにブルーオーシャンでしたね。もともとは就職前の社会勉強のために働いていたのですが、そういう状況でしたから、他社の内定を辞退してディースパークに入社しました。

チャンスが巡ってきたのは22歳の時です。会社は順調に成長し、東京支社を立ち上げることになりました。そこで支社長に立候補し、新宿・渋谷・秋葉原・横浜の支店を統括したのです。やはり東京はマーケットが広いですから、2~3年で関西の倍まで数字が伸び、その功績を認めていただいて執行役員になり、次いで営業本部長取締役に就任しました。その頃には、社員も100名くらいまで増えていましたね。

ただ、ベンチャー企業の急成長を経験し、自分の中に「いつかは独立したい」という思いが芽生えてきました。決定打になったのは、リーマンショックです。人材業界のマーケットは半分くらいまでシュリンクし、会社の売上も一気に落ち込んでしまいました。そうなると、どうしても社内で歪みが出てきます。意見の食い違いなども重なり、プライベートで仲が良かった篠宮(篠宮康伸/株式会社CIN GROUP代表取締役CEO)と一緒に起業することを決めました。それがリブレット設立の経緯ですね。1つの事業では景気の余波を受けやすいので多事業展開を構想し、まずはWebマーケティングからスタートしました。

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Q:その2年後に御社が設立されたのですね。CEOとCOOの兼任は大変ではありませんでしたか?

  そんなに苦労はしませんでしたが、反省点はあります。リブレットで、私はCEOとしての経営業務よりも、数字が伸びるPDCAサイクル作りに意識を向けていました。トップの使命は、会社を成長させることだと考えていたからです。しかし、それでは目の前の業務を回しているだけですよね。

ベンチャー企業のCEOの仕事は、ある一定までは大きく分けて2つあると思います。1つは今申し上げたように業務を回す仕組みを構築すること、そしてもう1つはビジョンやミッションを明確にし従業員の働く意義を明確にすることです。まさしくCEOとCOOの役割です。前者に特化したスタンスでも組織は回りますが、数字目標を追いかけるだけの毎日だと、徐々に従業員が疲弊してきます。仕事にどんな意義があるのか、どういう思いを持って仕事をすればいいのか、それを全社に浸透させた上で会社を成長させていくのが本来のCEO業務です。両輪の1つが欠けた状態だったのは、反省すべき点だと感じています。

 

Q:2015年4月、CINホールディングスからCIN GROUPに企業統合をされた背景をお聞かせください。

 ホールディングス機能の限界を感じたからです。CINホールディングス時代は、伸びると思った事業の子会社をどんどん作り、各組織に実務を回せる事業責任者を置いていました。ただ、それでは一定範囲までしか会社が成長しません。事業責任者の思いや能力だけで会社を引っ張っても、いずれ成長の壁にぶつかってしまいます。

壁を突破するためには、ビジョンやミッションを共通化させ、ホールディングス全体が1つにまとまらなくてはいけません。軸になるメッセージがないと、業務のやりがいも見出せなくなってしまいます。しかし、ホールディングスという形態ではビジョンやミッションがなかなか浸透しないのです。結果的には、やはり各組織の成長が行き詰まるようになりました。

それに、ホールディングス全体が100名くらいの規模まで成長し、各事業責任者の思いでまとめるのは難しくなってきました。篠宮と自分ではマネジメントのやり方が異なりますから、組織ごとにカラーの違いが出てきます。そうなるとホールディングスの一体感がなくなり、現場もどちらについていけばいいのかわからなくなってしまうのです。やはり他社の社長さんからも、「そのくらいの規模からはCEOとCOOの機能分けをしなくてはいけない」とアドバイスをいただきました。

もともとホールディングスという形態を取ったのは、資金管理などの経営面にメリットがあると考えたからです。しかし、ホールディングス機能自体がセクショナリズムを生んでしまい、各組織が強い思いやビジョンを持って動けなくなっていました。そのジレンマをなくすために、CIN GROUPという1つの実業会社として組織を統合したのです。ビジョンやミッションをすべて見直し、篠宮はCEO、自分はCOO業務に特化して各サービスを伸ばしていくことにしました。

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Q:篠宮さんと梅本さんは、それぞれ違うタイプなのでしょうか。

先ほどCEOの両輪の話をしましたが、篠宮はまさに自分に欠けていた部分を持っている人間です。組織をコントロールする上でも、相手を尊重する気持ちがあって初めてコミュニケーションが円滑になります。言いたいことを言うだけなら話は早いですが、それでは人は動きませんし、反発を生むこともあります。情緒的に相手を理解し、人を好きになろうとする姿勢は彼の美点ですね。

ただ、その優しさは時に甘えを生みます。厳しく物事を言った方が、実務が回りやすい場面もありますよね。僕はドライなタイプなので、特にクレドに関しては自分のカラーもかなり出したと思います。それぞれの良さを集約したのが、CIN GROUPのビジョンやミッションということになりますね。

 

Q:ビジョンの見直しには、かなりの労力がかかったのではないでしょうか。

 そうですね。工数で言うと1ヶ月ほどかけて練り直しました。外部コンサルの方からも客観的なご意見をいただき、今期第一回目のキックオフ直前にようやくフィックスできた感じです。

ミッションに込めたのは、「愛される会社」でありたいという願いです。従業員、ステークホルダー様、株主様、お客様の思いをすべて汲み取ることができる、器の広い会社が理想ですね。特に従業員には、CIN GROUPという会社を使って自分の幸せを叶えてほしいと思っています。そうでないと、会社に入る意味はありませんよね。従業員が存分に活躍できて、幸せになれるような会社を作っていきたいです。

 そして、今回特に重視したのはクレドです。COOとしての実務執行の指示指標になるものですし、クレドの実現はミッション、ビジョンの達成にも繋がります。ですから、かなり意見出しをしましたね。今まではそれぞれのやり方を尊重していましたが、グループ統合後は、篠宮と自分のやり方がそのまま会社全体のやり方になります。仮にオーナーが変わったとしても、会社のビジョンやミッションは生き続けますよね。そこに妥協は許されませんから、お互いの考えをすべて出し合いました。

 

Q:策定以上に浸透させるのが大変だと思いますが、具体的に取り組まれていることはありますか?

 自分の務めは、それらのメッセージを実務執行の為に発信していくことだと考えています。今まではそこを一旦横に置いて実務を引っ張ってきましたが、今後はそうはいきません。仕事を頑張るだけではなく、そこに意義や思いをプラスしてあげないと、会社の成長スピードは落ちてしまいます。

メッセージというものは、現場に一番近いCOOが発信することで浸透していくのではないでしょうか。特にクレドの浸透に関しては、お客様とのやり取りや売上を作る過程など、実務の中に浸透のチャンスがあると思います。今後はそこを強く意識していきたいですね。

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Q:グループ統合後はどのような変化がありましたか?

CEOとCOOの役割がはっきりしたのはやはり大きいです。まず、遠慮がなくなりましたね。今までは、篠宮の組織には極力タッチしないようにしていたんです。篠宮と自分がそれぞれ違う指示を出すと、現場に混乱を招いてしまいます。例えば飲みの席などでの何気ない発言でも、メンバーには指示と捉えられることもありますよね。そういったダブルスタンダードを避けるために、自分は篠宮の組織とは距離を置くようにしていました。グループ統合後は業務執行に関する指示がCOOである自分の役割になり、非常にやりやすくなりましたね。

 もともと役割を整理した時点で、篠宮は直接的な業務指示は極力出さないことになりました。一部彼が得意な領域に関しては関与してもらうこともありますが、あくまでもそれはアドバイスであって、業務指示ではありません。基本的に篠宮にはCEO業務に徹してもらい、資金調達面や会社全体の方向性を導く大きな動きに徹してもらいたいと思っています。

 

Q:COOをめざす方々に向けて、メッセージをお願いいたします。

 COOは、No.2ではありません。「自分もリーダーとして先頭を切っている」と考えて行動した方が、絶対に会社は良くなると思っています。その価値観を持つために何よりも大切なのが、CEOとの信頼関係です。自分は篠宮のことを絶対的に信頼していますし、ボスではなくてパートナーだと思っています。会社を良くしていくために違う役割を担っているだけであって、共同代表のような感覚ですね。「CEOを立てなくてはいけない」とNo.2を演じていると、いずれそれがストレスになります。ですから、「自分が会社を引っ張っている」という気持ちでいた方が、COOとしてうまく立ち回れるのではないでしょうか。そのためにはオーナー的な視点を持つことも大事ですから、株式を取得することも1つの手段だと思います。また何よりパートナーとなるCEOの器量を見極める事が大事だと考えます。

 

Q:篠宮さんに対する絶対的な信頼は、どういうところから生まれてきたのでしょうか。

 やはり人間性ですね。CEOが好き勝手に動くタイプだと、COOは非常にやりづらくなります。篠宮は、絶対にそういうことをしないんですよね。あくまで対等のパートナーでいられるので、率直に言い合うことができるんです。自分はどちらかというと好きにやりたいタイプなので(笑)彼があまり口を出さずに見守ってくれるのは、とてもありがたいです。きっと、人間的な器が大きいのでしょうね。あくまで対等のパートナーとして役割分担をしながら、共にCIN GROUPの発展に力を尽くしています。

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