最高執行責任者(Chief Executive Officer) への道のり

「CEOが船長でCOOが航海士」 株式会社エディア 取締役副社長 最高執行責任者 田口政実


 

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株式会社エディア
取締役副社長 最高執行責任者 田口政実

1972年4月3日生まれ 茨城県出身 大学卒業後、大手ゲーム会社に就職。製品企画、マーケティング、新規事業等を行う。その後、株式会社エディアに入社。2011年、最高執行責任者に就任。


COOまでの道のり

 大学では人類学を専攻したこともあり、よく学校を休んで国内外を放浪していました。卒業後は大学院に進もうかと考えていたのですが、社会とのつながりも作らずにフラフラしている自分にだんだん嫌気がさしてきたんです。旅を切り上げて帰国し、遅い就職活動を始めました。

 当時はWindows95が発売されてPCが一般に普及し始めた頃で、なんとなく新しいことが出来そうだと思いネット関係の仕事に就こうと決意しました。システムやインフラには興味がなかったので、将来ネット上で流通しそうなコンテンツということでゲームに着目しました。就職氷河期だったのですが、よくこんな人間を採用してくれましたよね。(笑)とても懐の深い会社で、今でも本当に感謝しています。

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 入社後は、主にアーケードゲームのマーケティングに従事していました。しかしPlayStationなど家庭用機の進化が著しく、ゲームの遊び方が変わっていた時代です。マーケティングを考えれば考えるほど、自分の仕事に違和感を覚えるようになっていきました。趣味やライフスタイルの多様化が進んでいくなかで、わざわざ施設に集客してゲームしてもらうというモデルの将来性に疑問を感じていたのです。
 
 その当時、高校生や大学生を中心にPHSや携帯電話のショートメッセージが流行りだしていました。市場調査をしていても、ゲーム機より携帯電話を使って遊んでいる若者の姿が目立つのです。彼らにとって、携帯こそがコミュニケーションを含めた娯楽のハブになりつつあったのです。これには衝撃を受けましたね。わざわざ店舗を構えて来店を待たなくても、携帯を使えば簡単に顧客にリーチできるんです。市場が顧客自身の懐に入っているようなものですから、これは世の中変わるなと直感しました。それからというもの、携帯を使った製品やサービスの提案に夢中になりました。
 
 その後、携帯向けにコンテンツを配信する新規プロジェクトの話が持ち上がり、私も立ち上げに参加しました。モバイルインターネットの黎明期における挑戦でしたが、結果的に事業は大成功。正式な事業部に昇格して、最初は20人くらいだったメンバーが急速に増え始め、オフィスも増床を重ねていきました。事業の成功は勿論嬉しかったのですが、時を経ずして勝ちパターンが見えてきてしまったのが個人的には問題でした。過去からの資産に恵まれた会社だったので、かつてのヒット作を携帯向けに移植して稼ぐという仕事が増えていったのです。かつて感じていたドキドキ感、ワクワク感はなくなっていきました。
 
 そんな時、知人の紹介でエディアの創業者である原尾と会うことになったのです。原尾は自動車メーカーからスピンアウトしていたのですが、これからベンチャーとして成長を目指すので、携帯関連事業のリーダーとしてうちに参画しないかと誘ってくれました。大企業の傘の下ではなく、小さな会社で自分自身の力を試してみたいと思っていたので、二つ返事で引き受けました。20代も終わりにさしかかり、将来の事をあれこれ考える時期でもあったんですよね。
 
 入社当時のエディアは、会社というよりはサークルみたいな雰囲気でした。社員は数名しかいなかったのですが、おそらくは取引先のエンジニア、パジャマ姿の編集部員、隠れキャラみたいに出社してくる学生バイトや誰かの飼い犬なんかもいたりしてカオスな感じでした。そのくせ自分の上司であるはずの役員には一度も会った事がなかったりして。(笑)
 
 でも、仕事に必要なものに限って足りなかったですね。社会的な信用、企画や営業のノウハウなんかは勿論、人事制度も管理会計の仕組みもありません。試行錯誤しながら1つ1つ創っていきました。今は随分大きくなりましたが、ジェットコースターのような10年間でしたね。僕は早い時期から役員になっていたのですが、原尾の意向で経営はチームでやろうということになり、2011年にCEO、COO、CFOというポジションをつくり、自分はCOOに就任しました。

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実は最近、経営について考えるようになりました

 もともとは経営に興味がありませんでした。ちょっと不遜な言い方になりますが、自分がしっかり仕事してさえいれば経営を考える必要がなかったんです。だって、事業がうまくいっていれば結局会社はうまくいきますよね?
 
 それに小さな会社にいると、仕事で発生する全ての問題の当事者になってしまうのです。営業だろうが開発だろうが、組織だろうが財務だろうが、分かろうが分かるまいが、自分で対処しない限り問題は未解決のままずっとそこに横たわっているんです。経営者であるとかないとか、そんなことを言ってられないんですよ。だから少なくとも僕の場合は、必要な事は全て現場の仕事から学んで、その延長上に今の立場が有ります。よく「経営と現場に求められる能力は違う」と言われますが、実はそんな事ないんじゃないかな、と思っていたのです。
 
 僕が経営というものを本当に意識したのはリーマンショックの後です。ある事業で、開発していた資産を大量に在庫として抱えてしまって、危うく潰れかけました。傍から見ればその事業に回復の見込みはなかったし、会社の財務状況が急速に悪化しているので早期に撤退すべきでした。でも、それを主導していた人間や現場のスタッフは、状況を好転させようと必死に頑張っていたのです。しかし、頑張れば頑張るほど傷が深くなっていく。損失を挽回しようと必死にやるほど、状況が悪化していく。人は追い込まれると視野が狭くなるし、組織の行動には強い慣性が働くので、現場の人間では変えられないこともあるのです。この時ばかりは経営者の責任の重さを感じずにはいられませんでした。
 
 「社員に何をさせて、何をさせてはいけないのか」それだけは経営者が自ら責任をもって決めないといけない。その時以来、経営について本気で考えるようになりました。

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CEOが船長でCOOが航海士

 会社によって違うと思いますが、弊社は原尾が船長で、僕が航海士みたいな感じです。いつどこに行くかは原尾が決めます。それを受けて、環境を見ながら航路を探り、運航計画を立て、クルーを指揮しながら操船し、そして目的地に辿り着く。これが自分の仕事です。
 
 どこの会社も似たようなものだと思うのですが、社長ってめちゃくちゃ言いますよね。(笑)「来年の売上を何倍にする!」とか、大企業が鎬を削るような業界に「新規参入する!!」とか、皆の前で突然言い出すんです。でも、少なくともCOOは絶対に「不可能」と言ってはいけません。言ってしまうと、その時点で社長の言葉はただの個人的な願望になってしまいますから。だから僕は、どんなことでも取りあえずポケットに入れてしまいます。すぐには消化できないのですが、とにかく考え続けてみます。すると意外になんとかなりそうなプランを思いつくものです。CEOが言った事を実現可能性のある目標に変え、それに会社の仲間を相乗りさせ、実際にトライさせるのが僕の役割なのです。
 
 僕にとってCOOという仕事の魅力は、経営者であり、同時に現場のトップでもあることです。二つの顔を持っているので、会社の成長、社員の成長を一番肌で感じられます。やることが多くて消耗するポジションだとは思いますが、その分、全人格的な努力を要求されるところも面白いですね。COOの仕事に明確な枠組みは無いので、企画、営業、開発、人事、マネジメントもリーダーシップも、時には人間関係のケアまで含めて、必要な事は何でもやらなくてはなりません。そうすると、基本的な知識や思考力なんかはもちろん、度胸、忍耐、感受性など、あらゆる人間力が試されます。仕事を楽しみ尽くしたい人には最適のポジションかもしれません。

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COOを目指す方へ

 そもそもCOOって目指すものなんですかね?私はCOOですが、目指すなら普通はCEOなのでは。(笑)
 
 COOで良ければ、実はどんな部署のどんなポジションでもなれます。例えば営業部員なら、自分が営業を上手くやるうえで必要なことを全て視野に収め、その全てに当事者意識をもって働きかければよいのです。すると自然に、その組織はその人がいないと上手く回らないという状態に変わっていくと思います。それはつまり、その組織のCOO的なる者になっているということです。後はそれを全社規模でやればいいだけです。

 

 

 

 

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