最高財務責任者(Chief Financial Officer)の生きる道

「リーマンショック?会社更生法申請?面白いじゃないですか。」 Sansan株式会社 取締役CFO 兼 経営管理部長 田中潤二


 

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Q 2013年1月入社と同時に取締役に就任し、4月に5億円の調達でしたね。絵は田中さんが書かれていたんですか?

 もちろん代表の寺田の中にプランはあっての事ですが、私の本格的な仕事は入社後の1月半ばからですね。交渉に入って無事4月にまとめる事ができました。もともと寺田とは大学の同級生で過去にも誘われていました。タイミングが合わずに入社には至っていませんでしたが、2013年の1月に参画を決めました。
5億円に関してはニッセイ・キャピタルや既存株主のGMO VenturePartnersから調達し、今後のEightの開発やマーケティングに充てることで、国内外数百万ユーザーのビジネスインフラを目指す予定です。

 

Q M&AアドバイザーからCFOになった経歴は?

  大学を卒業してモルガン・スタンレー証券に入社しました。3年間金融機関の担当として主にM&Aのアドバイザーをしていました。モルガンに在籍していた1999年から2001年頃の日本の金融業界では、金融ビッグバンや金融機関の相次ぐ破綻が重なり、海外の保険会社や金融資本などが大挙して日本市場に参入するような時代でした。みずほ銀行をはじめとするメガバンクができた頃でもあり国内外の合併統合が非常に多く、そうした案件のお手伝いをしていました。それからM&Aって面白いなということで、カーライル・グループに入り自分が投資をする仕事を始めます。

 投資会社(ファンド)っていうのは当時「ハゲタカ」と呼ばれていて、リップルウッドというファンドが日本長期信用銀行を買ったときは、まさに「ハゲタカ」と叩かれましたね。ファンドという仕事は、人様からお金を預かって会社(株式)に投資し、大きくして売却した利益を返す仕事です。投資先を探し、投資をした後にその会社と関わりながら会社の価値を上げるという仕事を4年間やりました。
 次のMBKパートナーズでもカーライルと同じような投資の仕事を1年ほどしました。カーライルから通算5年ほど投資の仕事をしたことになります。その後リーマン・ブラザーズ証券に入りますが、結論から言うと、入社から1年半でご存知のリーマンショックがありました。リーマン全体の自己投資に関するマネージをするグローバルチームを立ち上げるので、社外で投資実績のある人間を連れてこようというような取り組みの中で機会をもらいました。

 リーマンで働き始める時は、このタイミングで外から人を採って自己投資のチームを立ち上げることに何となく違和感もあったりしましたが、でも、リーマンみたいなプラットフォームでこんなチャンスはないので面白いかもと。あのような終焉を迎えるとは誰も思ってはいなかったですが、結局リーマンの一部の事業が野村証券に買収されたことで私も野村証券に入ることになりました。2009年10月に立ち上げた、企業再生支援機構がスタッフを集めていると知り合いから声がかかり11月に入社しました。ほとんどはJALにて再建の支援をし、一昨年の9月19日にJALは再上場しました。まだ野村証券にいた頃、私の周りでは「あいつまた転職するだろうな」と噂をしていたようで、大学の同級生である寺田からもCFOとして一度誘いを受けていました。しかしその時点ではSansanにCFOとして自分が入るのは“今ではない”と判断しました。ファイナンスは会社にとって必要な機能ではありますが、その必要性や重要度は会社のステージによって全然違うと思うんです。当時のSansanにはそれほどお金も必要ないだろうし、すぐに上場するという感じでもなかったですし。その後、JALが再上場する頃にまた寺田と会ったとき「まだCFOが決まっていない」と。この頃には会社も順調に伸びていて、今後更に前進するためにはファイナンスが必要だし自分はそれを提供することが出来ると思い入社を決めました。

 

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Q 4年前ではなく今のタイミングで参画された決め手は?

 でかい勝負を張れる感じですかね。当時は5億円あっても使いようがなかったと思うけど、今は、あれもしたいし、あんなことも出来るということがたくさんあります。でかけりゃいいわけじゃないけど、僕は金融屋なので、新しいマーケットをつくるとか商品コンセプトがどうとかっていうことでの貢献は1ミリも期待できないわけです。その中で僕が貢献できるのはファイナンスの話であって、数千万のお金の話なら僕以外でも出来ることだと思います。4年前に入っていたらCFOっぽい仕事があんまりなくて、最悪辞めちゃっていたかもしれないですしタイミングとして今でよかったと強く思います。

 JALが再上場した後に他のお仕事の話もいくつか頂きましたが、今回は早い段階で寺田と話して、Sansanに入ると決めていたので他はほとんど見ませんでした。もし、ベンチャーのCFOになりたいという明確な意志があれば他にも当たって探していたかもしれないが、CFOになりたいと思ったことは未だかつてなく、たまたまのタイミングでワクワクしたのがCFOだったということです。

将来を見据えて逆算するのはやりたくないですね。何か大きな到達点が遠くにあってキャリアを積み上げていってるわけではないですし。僕は性根が怠け者なので、放っておくと楽な方に流れていきます。そうならないように自分を戒めています。その時にやりたいと思ったことを職業にしているんですよ。自分でも投資(M&A)をやってみたいと思ってカーライルに転職したところから始まり、リーマンやJALでの仕事も“面白そう”とか“今しかできない”というワクワク感があったからです。

せっかく限られた時間の中で仕事をするのであれば、ワクワクしてやってみたいと思う仕事をしたいです。とは言え、“やってみたい”だけでは仕事は任せてもらえないので、職業を選択するときは“やりたいこと”の次に、その仕事をすることで“将来の選択肢を狭めないか”を常に自問自答しています。
“やりたいことをやる”だけだと、僕は流れに身を任せてニートになってしまいます。笑ニートになると、将来やりたいことが出てきた時に、なかなかやらせてもらえないじゃないですか。

 そう考えると今ここでSansanのCFOをさせてもらっていることも、積み重ねてきた経験やキャリアがあって任せてもらえているので、間違ってはなかったなと。そして今この仕事が出来て嬉しく思っています。

 “今しかできない”というのは、話をしていてわかるんです。リーマンやJALの時もただ事ではない感じがあったわけですよ。今回Sansanに入るときもこの1年で大きな変化があるなと興味を惹かれるものがありましたね、4年前にはそれがなかったのかもしれないです。この4月に5億円調達して、様々な投資ができ、リスクを恐れず勝負できる環境があるところに魅力を感じています。

 

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Q:sansanでのやりたい事は?

 やりたいことは、生きるか死ぬかの瀬戸際に当事者として関わりたいということです。やるからには生き残らなければなりません。僕がやれることは、ガンガンアクセル踏んでやっていく会社が、ガス欠しないようにガソリンを注ぎ足していくことです。その為に寺田は僕に声をかけてくれたと思っています。寺田以外の役員とも話ましたが、他社と比べても事業に対するコミットメントが違うなと思いました。金融会社ってちょっと現場から離れているし、プロフェッショナルワーカーの集団なわけですよ。プロとして独り立ちしているので会社がつぶれても一人で生きていくことは可能、というような少し冷めている感じがしていました。Sansanにいる人達は事業が成功すると信じてるしみんなが本気で頑張っていて、この人達と一緒にやりたい、何とか成功させなきゃと今までにない感覚でした。

 

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Q 今しかできない事、やりたい事をやり続けるためには?

 仕事に対しての距離感を間違えないことですかね。遠すぎると成果は出せないので、成果を出そうと思ったら没入して密着しないといけない。一方で、自分の大事な人生の一部をこの仕事に割り充てているんだという客観性を保ち続けなければいけない。無条件に満足してはダメかなと。没入しないと成果は出ないし、没入し過ぎると新しい発見も生まれない。更に言うと、やると決めたらとことんやるが、一旦バックして自分を見つめなおす機会を作る、メリハリをつけることですかね。転職しろと言ってるわけではないですよ。見つめなおすことによって、自分の仕事は面白いと再確認することが出来たらそれは本質的に価値あることだと思います。この距離感に関するバランス感覚が成果を出しながらキャリアを積んでいくことにおいて重要かなと思います。

モルガンのような外資系証券会社は当時は3年契約が基本で、その後はアソシエイトに昇格するかクビかという世界だったので、逆に3年経ったら考えられるんだと思って没入してとことんやりました。
3年経って、更に5年10年働こうかと思った時に、ここしか知らない自分だとコミットできる自信がないと思いました。外を見た上でやっぱりここが良かったと思えたら自信ができる。1週間就職活動させてくれという話をしに行きました。ちょうどその時にカーライルが東京のブランチをセットアップしていて、今しかできないチャンスだと思ってモルガンを辞めました。モルガンで仕事に没頭した3年間で得たものは多く、非常にいろんなことを体験させてもらいました。当時は何の意味も見いだせなかったけど3年経って振り返ってみれば意味はあったんだと思えたので、仕事のバランス感覚という意味での原体験になっていますかね。

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