最高財務責任者(Chief Financial Officer)の生きる道

「お金には色がある」 株式会社ユーグレナ 取締役 経営戦略・経理財務・総務人事担当 永田暁彦


 

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Q:公募増資などで75億円の資金調達、財務担当役員としての役割は?

 11月18日付のリリースの通り公募増資500万株と、最大90万株のオーバーアロットメントによる追加売り出しを実施し約75億円の資金調達をすることとなりました。僕の役割としてはエクイティストーリーを描き、調達資金が収益化される未来をデザインして、株式市場から調達すべき金額であるということを示すことで調達の正当性を証券会社やマーケットに示すことが一番の仕事です。

 

  ただ、僕はエクイティでの資金調達だけがCFO的な仕事とはあまり思っていません。エクイティファイナンスって会社の未来を描きそれを人に納得させることが主だと思うのです。一方で、過去100億円に近いエクイティファイナンスを重ねて来たこと、時価総額が増加したことで、これからようやく自分が目指すCFO的な動きが出来ると思っています。それはすなわち会社としての財務的信頼性が高まったことにより可能となる借入やCBなどのコーポレートファイナンス、事業投資や設備投資にともなうストラクチャードファイナンス、投資したアセットを活用したアセットファイナンス、資金や株価を活用したM&Aなど、事業会社として選択できる手法が拡大する、ということです。事業を成長させる中で、選択できるファイナンス手法の幅を広げ、場面や目的に合わせて最適な手段を選択し事業をデザインしていくことが財務担当役員の一番の役割だと思うのです。エクイティファイナンスというのはその段階にたどり着くための一つの手法とも言えると思います。

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Q:新卒2年目でユーグレナ社の社外取締役になったそうですね。

 はい。もともとユーグレナ社に出資していたインスパイアという会社に入社したのがきっかけです。大学在学中はWスクールをしていて会計士になるつもりでしたが、大学3年生の時にインスパイア社の現社長と知り合う機会があってそこでインターンに誘ってもらったのが入社のきっかけです。インスパイア社には大きく分けて3つの事業(自己資本投資部門・ファンド部門・コンサル部門)があり、自分はどうしても自己資本部投資門に行きたかったんですよ。希望が通って自己資本投資部門に配属された時、ユーグレナ社はインスパイア社が出資していた沢山ある投資先の中の1社でした。担当先企業を決める時にも自分の希望を会社が通してくれて、自分が「これだ」と思うユーグレナ社を含む企業数社が自分の担当先になりました。自分が出資した訳ではないですが将来性を見込んで自ら選んだ会社ですから熱心にバリューアップに努めました。その姿を認めてくれたのかインスパイア社は大株主として2008年12月にユーグレナ社の社外取締役として僕を選びました。

 

 当時インスパイア社が投資先に派遣する社外役員はインスパイア社の役員かファンドマネージャーしかいなかったので新卒2年目で選んでくれたことは異例中の異例でした。一方でユーグレナ社の取締役陣は不安だったと思います。それまで百戦錬磨のビジネスマンが支援してくれていたのにいきなり新卒2年目の若造に変わったのですから。その不安を払しょくする為にとにかくやったのが、法務と財務の知識の拡充とキャッシュフローの創出です。法務と財務は年齢に関係なく絶対的な解があるので誰もが同じステージに立って議論ができます。またキャッシュフローを持ってくる行為も同様です。その結果、1年もするとユーグレナ社の社長の出雲から誘ってくれて、後から役員として入る身として数億円のエクイティファイナンスを手土産に、2010年4月に正式に籍を移しました。

 

 移籍してからは経理財務・総務人事などの管理部門、事業戦略・事業/資本提携・広報などの事業部門を統括する事になりました。管理部門のすべての基準を上場基準まで持っていかないと行けない状態、加えて事業提携や資本提携、ミドリムシのメディア戦略を拡大していくというミッションがある中、その時僕のチームでまともに稼働できたのは同世代の人事担当の女性と出納担当の女性の2人だけでした。資金調達に関しては絶望的な時期でもありましたし、さらに震災も加わりとにかく本当に毎日辛くて辛くて、正月すら休みもなくて無心で勉強と仕事を繰り返していました。心が折れそうな時は僕を選んでくれた大株主のインスパイア社と僕を受け入れてくれた当時のユーグレナ社の取締役に恩返しをしたい、というのが最後の最後に踏ん張るパワーを生み出す源泉になっていたと思います。

 

 途中からは素晴らしい仲間も増えてそのお蔭で上場に辿り着くことができたのですが、実は上場に関しては2転3転あったんですよ。創薬ベンチャーの中には赤字上場している企業もたくさんあったので研究開発型の当社も最初は赤字上場を考えていました。ですが当時の主幹事証券は赤字上場を受け入れてはくれず、結果的にマーケティングチームが売上を上げて研究開発チームが最小限の費用で研究を進めてくれたおかげで研究を継続しながら利益を創出することに成功し上場基準を満たすことができました。上場できるようになってもバリエーションの戦いはめちゃくちゃありましたね。納得いくバリエーションじゃないとやらない、大事な会社を安く売る気は毛頭ありませんでしたし。上場時のバリエーションが証券会社側と合わずに、アメリカ(ナスダック)を目指そうとも考えて外資系の証券会社と話し合いをしていた時期もありました。結果的にSMBC日興証券の理解と協力があり無事2012年12月に上場する事ができました。

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Q:社長との役割については?

 代表の出雲は良い意味で理解できない人ですね。僕は出雲の考えている全体を一番理解しているつもりですしそれを実現したいと思っていますが、出雲が描く未来や選択する手法は突き抜けているし求めるレベルが本当に高いので、それ本当にやるの?ということが多々あります。実際に僕が反対してやらない事もあるんですが、社長がやるべきだと言い切って実施したことは往々にして後から未来が追いついてくるんですよ。それを何度か経験していると自分が100%納得していなくても出雲が言うなら、となってきます。また、人って未来を約束する時は保守的になりがちなので80%位で物事をコミットするじゃないですか?だけど出雲は120%や150%でコミットしてくるんですよ。120%でコミットされると80%でやっている人は否が応にも100%以上をやるじゃないですか、その意識は社内にも良い影響が出ていると感じています。まだまだ規模やレベルは違いますが未来の孫正義さんを僕の中ではイメージしています。

 

 例えば上場前にANA、清水建設、電通、東京センチュリーリースなどの事業会社からファイナルラウンドで資金調達をしました。当時はリーマン後で本当にベンチャーの資金調達が難しい時期でしたし、連携が図れる事業企業のみを対象にしていたのでANA以外の3社のファイナンスが決まったとき僕は十分よくやったな、と思ってしまいました。電通本社がベンチャーに直接出資して、しかも事業提携契約まで締結するスキームは電通100年の歴史で初めてでしたし。でも出雲は違いました。僕たちの目指す事業上ANAが株主に絶対に居るべきだ、と。ANAに出資して欲しいと思ったら実現できるわけじゃないし、ANAはベンチャーに出資をした過去もないから難しすぎると思っていました。でも最終的には社長の目線に合わせるためにあらゆるチャレンジをして実現させた訳で、やればできることだったんです。出雲は常に高い目線で120%のことを要求してくる、こっちも出雲を信じて保守的になるのではなく本当に120%を持っていく。僕じゃなきゃ120%のものを持ってこれなかったというプライドもありますが、一方でそれも出雲がいてくれているからこそできた事です。多分自分一人でやっていても同じ事はできないと思います。

 

 出雲が限界値を引っ張り上げてくれてるんですよ。今回の75億円のファイナンスだって自分としてはまだできることがあったと強く反省して悔しい思いを持っています。でも、そうしているうちに僕も会社も成長するんだと思います。それも、本当にどうしても無理だダメだと僕が言うと出雲が引き下がってくれる社長としての懐深さがあるからバランスが取れているんですけどね。

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:お金を出す側と受ける側からの視点としては?

 僕がユーグレナ社にかかわって資金調達をした投資会社、事業会社で上場して時価総額が20倍になっても全部売ってしまった会社は1社もないんです。明確なストーリーがあって出資してくれた事業会社達は理解できますよね。でも僕が関わる前に出資したVCは一社を除いて上場直後に嬉々として市場で売却していきましたが、僕がお願いをして出資してくれた投資会社のアイビスキャピタルと自分からすれば親元であるインスパイア社は上場がゴールではなく、まだ僕らの描く将来に賭け続けてくれている訳です。これって会社の未来もそうですし、僕のことも信頼を置いてくれているのでは、と思ってしまいます。これは上場の時に株を買ってくれてまだホールドしてくれている個人投資家の方にお会いした時も同じことを感じました。

 

 そういう中で集めた資金はバランスシートに記載される現預金の中で明確に色が違って見えるんです。この部分はあの時誰から調達した分、これは上場の時に公募した分、と。そう思うと、株主に対する責任や還元の意思が強くなるんです。だからお金はこういう使い方をしないといけない、成長してお返しをしないといけないと強く意識します。投資側に居て感じたのは他人資本が入った時に自己資本と勘違いする人が多いことです。例えば不要な社用車を買ったり、オフィスを無駄に豪華にしたりとか、本当に株主価値を拡大するための施策であるかと自己問答できているのか、と。インスパイア社で自己資本投資部門にいた事はとても良い経験でした。投資には意思があり、それを受け取る側には義務がある、と学べたからです。

 

 僕は多分社員や仕事のパートナーからはドライでクールなタイプだと思われていると思うんですが、ベースはプロフェッショナリティと義理で生きています。あの時出資していただいた、あの時選んで頂いた、それを企業成長でどうお返しできるか、株主から指名頂いた取締役として何ができるのか。これらが仕事を進める事業を進める大きなモチベーションになっています。

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