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「会社の成長のために何をするか」それが仕事の本質
株式会社マネーフォワード
執行役員CFO 金坂直哉

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■金融ビジネスで世の中を変えたい

Q:東京大学を卒業された後、まず、ゴールドマン・サックス証券に入社されていますが、それはどのような経緯だったのですか。

A:開成高校から東大に進んで、自分なりに「狭い世界で生きているな」という自覚があったんです。ビジネスとかマーケティングとか、視野が狭いなりにそういったことに興味を持ったので経済学部に入ったのですが、そこから先は、意識していろいろな活動をするようにしていました。学生の海外インターンシップをコーディネートする団体を運営したり。

 

Q:海外の学生を日本の企業にインターンさせるということですか。

A:双方向あって、日本の学生を海外企業に送るというパターンもありました。その活動を通して、企画の運営をしたり、社会と接点を持つこと、世界と接点を持つことがすごく楽しくなったんですね。自分とはまったく違うバックグラウンドや価値観を持っている人と、何かするっておもしろいなと。
私自身も学生時代に2カ月ほど香港に行って働きました。海外で働いてみたいという希望も持っていたので。

 

Q:最初の会社にゴールドマン・サックス証券を選んだのはそういった理由からですか。

A:実は、大学時代に「ビジネスマンとしてのベーシックスキルを付けたい」と思い、いわゆるダブルスクールで会計士の資格スクールに通っていたんです。ただ、会計士って“監査”をするわけですが、それが本当に自分に合うのかな、という疑問もありました。そこで、ちょうどその香港のプログラムが現地の監査法人で働けるというものだったので、「これは一石二鳥だ」ということで行かせてもらうことにしたんです。

 

Q:結果的には?

A:ちょっと監査は違うかな…となりまして(笑)。自分のやりたいのは、もっと金融寄りの仕事だな、と。
私が就職活動をしていた頃にはライブドア事件などもあって、「会社は誰のものか」といった議論がされていました。その問いに、当時の私は答えを見いだせなかったのですが、それでもプライベート・エクイティのような仕組みで世の中を変えることはできないかといった関心はあって。ゴールドマン・サックスはちょうどその頃、プライベート・エクイティのチームを強化していたので、一番の関心事に関われるかなという思いで入社を決めました。
大学を卒業する頃には、資本市場とか、M&Aとか、企業価値とか、そういったテーマに一番関心が高かったですね。

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■信頼関係の基礎は「いいことも悪いことも包み隠さず言うこと」

Q:それから、8年という比較的長い間ゴールドマン・サックスにいらっしゃるわけですが、働き方や仕事観などはどのように変化していきましたか。

A:最初の3年間は、希望通り、プライベート・エクイティのチームに配属されて、投資先であるクライアント企業の方々とコミュニケーションを図りながら、その会社の価値をいかに最大化していくかがテーマとしてありました。そのテーマを追う中で、会社がどんな仕組みで動いているのかとか、そこで働く人たちの思いがどう組み合わされて企業風土や理念ができていくのかといったことも学びました。チームの中では、当然、自分が一番の若手でしたから。
その間にはリーマンショックもありましたが、厳しい状況の中でどう会社を建て直していくかとか、成長を描いていくかといった課題に深く携わることができて、今に至るキャリアの非常に重要な基礎になっています。

 

Q:金坂さん流のクライアント企業との信頼関係の築き方など、気になります。

A:もちろん、すべてのクライアントの方と信頼関係が築けたかというと、そうではなかったケースもあるのですが、基本スタンスとしては、やはり「いいことも悪いことも包み隠さず言う」ということ。その積み重ねによって、「この人はウソをつかない人だ」と信頼を得ることにつきるのかなと思います。
会社を経営していると、いいことばかりではなく、悪いことが起こることもありますよね。でも、起こってしまったことは仕方がない、では、それに対してどう取り組んでいくのかという提案を真摯にしていくということ。また、ひと口にクライアントと言ってもいろいろな価値観、立場の方がいらっしゃるので、それぞれの方の状況を理解した上で、適切な形や順番でのコミュニケーションをとることも大切ですね。

 

Q:チームの中での一番の若手とおっしゃいましたが、ゴールドマン・サックス時代に経験した悔しい思いとか、挫折といったことはありましたか。

A:“挫折”という認識はしていませんが、やはり、とても優秀な方がたくさんいて、上司だけではなく後輩からも学ぶことが多く、本当に鍛えられました。キツいことも多々ありましたが、「お客様に対して、期待以上のクオリティでアドバイスやサービスを提供するんだ」という思いで頭がいっぱいだった気がします。

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■世の中を簡単に変えていくベンチャー時代の到来を実感

Q:そのように真摯に仕事に向き合い続けられていた金坂さんには、地位やキャリアもある程度約束されていたのではないかと想像するのですが、そこからマネーフォワードというベンチャー企業に飛び込まれたのはなぜだったのですか。

A:ゴールドマン・サックスで、1年間、サンフランシスコのオフィスで働いていたことがあるのですが、そこでベンチャーのプロジェクトに関わり、「世の中が結構衝撃的なスケールで変わっているんだ」ということを実感したんです。例えば、いわゆるライドシェアのサービスで、Uberとか、Lyftとか。ニューヨークでは知られていないのに、西海岸ではみんな知っている!といったサービスが急速に出てきて、しかも、それが当たり前のように人々の暮らしに入り込んで行く。それを目の当たりにして、それまでの日本の暮らしでは、味わったことのないような、時代の変化を感じました。やはり、スマートフォンの登場は大きくて、これまで不可能だと思われていたことがどんどん可能になっていく。そんな希望を感じながら2013年の夏に帰国して、私自身も使い始めたのが“マネーフォワード”でした。

 

Q:そのときの、アプリを使ってみてのイメージが転職のきっかけになるのですか。

A:これは、たまたまなのですが、学生時代の友人が少し前からマネーフォワードにいて、そこから「うちで財務の仕事をする人間を探しているけれど、興味はないか」という話が来た、というのが直接のきっかけです。「おもしろい会社だな」と思っていましたし、今後、このサービスはもっと広げられる、そんな直感もあって転職を決めました。マネーフォワードのプラットフォームが広がるとお金に関するいろいろなアクションの入り口ができますからね。もちろん、社長の辻や役員で創業メンバーの浅野や瀧ともずいぶん話をして、将来的なビジョンや会社の理念にも非常に共感しましたし、このメンバーだからこその可能性を感じたというところも大きかったですよ。

 

Q:ゴールドマン・サックス時代にさまざまなタイプの経営者を見てこられたと思うのですが、その経験からマネーフォワードの経営陣にはどのような印象を抱きましたか。

A:ひと言で言うと、信頼できる人間だと思いました。この会社を設立した経緯が、いかに儲けるかといったことではなく、お金のプラットフォームを作ることで、いかに世の中を良くするかということだったので、「自分も一緒にやりたい」と思いました。

 

Q:「社会貢献の精神」といったところが響いたのですか。

A:このままだと、日本が世界の中での優位性をどんどん失っていくでしょう。そんな中で、日本の人々が少しでも希望を持てる国にしていくためには、お金に対する考え方を変えていく必要があると思っています。日本の国家財政がこのような状況のなかで円安やインフレはまだまだ進むでしょうし、既存の年金制度も破綻する可能性が高いと思います。そのようなマーケット環境で日本人がいつまでもお金を銀行口座に寝かせているような状況ではいけない。もちろん、この会社の存在だけで社会を変えられるとは思いませんが、マネーフォワードというサービスがひとつのきっかけになることはあり得ると思っています。

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■良好な協業関係が資産の有効活用につながる

Q:昨年、執行役員に就任されましたね。客観的に、どのようなところを期待されての任命だったと思われますか。また、御社内でのCFOの役割とは。

A:マネーフォワードの場合、他の事業会社様や金融機関様と一緒に取り組んでいくビジネスが多いのですが、事業部とも連携し、新しい提携や取り組みの話の推進など、会社としての次の布石となる仕事に関わることが多いです。
転職して最初のミッションが、資金調達をするということだったので、財務面、数字面を客観的に見ながらも、実績や投資に対して、特に株主の方々に対しての責任を持つという役割を継続して任されています。あとは、会社にあるリソース…それはメンバーやお金に限らず、事業パートナーだったりもするのですが、それらをどう組み合わせて成果を最大化するかとか、会社の成長を一番速いスピードで達成してより多くのユーザーにサービスを届けるにはどうするか、といったあたりも経営陣として担っていると思います。

 

Q:なるほど、最後の方はCOO的な側面も感じますね。

A:スタートアップではCFOの仕事自体に、こうあるべき、という定義はないと思っています。ただ、マネーフォワードという会社の特徴として、例えばご出資いただいている金融機関様とは、いわゆるベンチャーキャピタル的な関係ではなく、ビジネスパートナーとして一緒に事業を作っていくという関係性を作っています。ですから、協業の取り組みと財務まわりのつながりは他社よりも強いと思います。

 

Q:ご自身では、業務の切り分け、守備範囲をどのようにとらえていますか。

A:状況とか相手によっても変わってきますが、会社として常に心がけているのは、コミュニケーションを密にすること。メール、電話、チャットツール、あらゆるものを利用して常に情報を共有しながら、進め方やメンバーの顔ぶれなどを決めていくのが暗黙のルールなんですね。ただ、この1年でメンバーの数がとても増えてきて、10人で決めていたことが20人、30人となって来た。その中で、今までのコミュニケーションスタイルをどう踏襲していくかとか、そういったあたりには気を配るようにしています。また、いわゆるバックオフィス業務については私自身バックグラウンドとして専門では全くないですし、管理、経理、法務それぞれに非常に優秀なメンバーがいるので、彼らにほぼ任せています。

 

Q:社員はどのくらい増えたのですか。

A:私が入社したとき35人くらいだったのが150人まで増えています。だいたい1カ月に10人ペースで増えている感じですね。

 

Q:となると、調達している資金の投資先は主に人材ということになりますね。

A:そうですね。特にクラウドのサービスは、お客様に長期間使っていただくことで安定的に収益が伸びていくビジネスモデルなので、必要な人材を確保しつつ、ある程度の体力が残っている状態を維持できることが重要になってきます。今、当社では、サービスのラインナップがかなり増えていているのですが、とくにto B向けのサービスはしっかりと説明をしていかないとなかなか契約には結びつきません。そうなると、きちんとお客様とコミュニケーションが取れる営業メンバー、エンジニアメンバー、カスタマーサポートのメンバーが非常に重要だと思います。
ただ、メンバーが増えたといっても会社の方向性は以前と変わっていません。「こういうサービスを作っていきたいよね」「このサービスをこのサービスをこんな風につなげたいよね」と描いていた青写真を実現していくステージにいるんだなと実感しています。

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Q:今後、CFOを目指していく方にアドバイスはありますか。

A:会社のステージや状況によって求められる役割や仕事って、相当違ってくると思うんです。その人のバックグラウンドによって強みも違ってくるでしょうし。でも、最も本質的なことは、やはり「その会社をどれだけ成長させられるか。そのために何をするか」ということだと思うので、自分の会社の財務が株主から見たらどう映るのかとか、自分たちが出資する企業に対して株主としてどう振る舞うかとか、多角的な視点を意識することは大切でしょうね。そして、どんなに重要なポストを任されても自分一人では絶対に何もできないので、強いチームをいかに作っていくかということの重要性も日々感じています。

 

Q:ありがとうございました。では、最後に、金坂さんの今後の目標を。

A:今、個人向け家計簿サービスでは350万人ぐらいのユーザーさんにご利用いただいているのですが、その350万人全員がフル活用しているわけではないんですよね。ですから、まずは、もっと多くの方が当たり前のようにマネーフォワードを使っているという状況を目指したい。今、当社はフィンテックへの関心の高まりもあり、おかげさまで注目を浴びていますが、それがどれだけ世の中に変化をもたらしているかというと、まだまだ限られていると思うんです。やれることがきっとまだまだある。それを、一つ一つ実現していきたいですね。

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