「経験それが人生」すべての経験は企業(自分)の成長のために
株式会社リンクバル
代表取締役社長 吉弘和正

cropped-LINKBAL5.jpg今や老若男女の交流の場として広く知られる「街コン」。その立役者である株式会社リンクバルは、2013~2014年にかけて売上高181%増、2015年4月には東京証券取引所マザーズ上場を果たすなど、飛躍的な成長を遂げている。その背景には、幼少期より起業を志してきた代表取締役社長・吉弘和正氏の長年に渡る「経験」の積み重ねがあった――。

■略歴

1970年生まれ、群馬県出身。カリフォルニア大学サンタバーバラ校経営経済学部・政治学部卒業。帰国後は不動産投資、プライベートエクイティー業界を経て、その後オックスフォード大学でMBAを取得。2008年にHamilton Laneの日本のオフィス設立と事業の立ち上げに従事。退社後は社外アドバイザーを経て、2011年12月に株式会社リンクバルを設立し、代表取締役社長に就任。2015年4月、東京証券取引所マザーズ上場。

Q:まず、吉弘さんのご経歴からお聞かせください。

 私のキャリアの始まりは、18歳のときの経験に遡ります。高校卒業の直前に父が経営していた会社が倒産し、一旦は大学進学を諦めました。会計事務所で働いた後、20代前半でアメリカに渡り、カリフォルニア大学サンタバーバラ校を卒業しました。

 アメリカに行った理由は2つあります。1つは、時代の先取りです。アメリカで流行しているものは、5年後10年後に日本に来ると思ったからです。それを先取りして日本に持ち込むことができれば、ビジネスチャンスになると考えました。もう1つは英語です。いずれ帰国しても、既に他の人より出遅れていて巻き返すことは難しいのかと。そこで必要なのが、他者との差別化です。当時は海外に渡る人も少なかったので、英語を習得できれば自分の価値を上げられるはずだと考えました。同時に、英語を使えるようになればネットワークが広がるだろうという期待もありましたね。

 ただ、家庭の事情もあり、私は学費も生活費も自分で稼がなくてはいけない状況でした。そこで、古着ビジネスと業務委託の仕事をしながら大学生活を送ったのです。後者の仕事は、会計事務所の顧問先だった不動産会社から請け負っていました。個人事業主ではありますが、当時から起業に近いことをしていたことになりますね。

 

Q:大学卒業後にお勤めになったのが、そちらの不動産投資会社でしょうか。

 はい。長年ご縁があり、大学卒業後にお声をかけてくださいました。その会社では不動産投資事業の立ち上げを行いました。ただ、その会社は国内の仕事に特化していたのですが、せっかく海外の大学を出たのだから海外の仕事に携わりたいと思い、2年後にプライベートエクイティー(PE)業界に転職しました。次の会社はプライベートエクイティーのファンドレイジングを行う、業界ではプレースメント・エージェントと呼ばれている会社です。海外のPEファンドを日本の機関投資家に紹介するというものです。

 PE業界に入ってみるとMBAホルダーが多数おり、私もMBAは最低限の知識として必要だと感じたことから、30代半ばにオックスフォード大学のMBAを取得しに渡英したのです。

 そしてMBA取得後は、Hamilton Laneに入社し、日本オフィスの立ち上げをおこないました。同社はプライベートエクイティーに特化した投資顧問で機関投資家へのアドバイザリーなどを行っている会社です。入社のきっかけはプレースメント・エージェント時代のクライアントで仕事を一緒にしたこともあったHamilton Laneの会長から日本事業の立ち上げをやらないかとお誘いを受けたことからです。それはリーマンショックの約1年前ですね。リーマンショックがもう少し早く起こっていたら、Hamilton Laneにはいなかったかもしれません(笑) 同社には4年ほど勤め、2011年12月にリンクバルを設立しました。

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Q:もともと、将来的には起業をお考えだったのですか?

 その思いは幼い頃からずっとありました。常に「いつかは起業したい」という意識が頭の片隅にあり、そのためにはどうすればいいかという観点から仕事を選んでいました。

 まず、最初に会計事務所を選んだ理由は、様々な業界や会社を見れるからでした。可能性のあるビジネスを見極めて転職し、いずれはその業界で起業することも視野に入れていました。そこで注目したのが、不動産業界です。大学卒業後は不動産業界に入り、不動産に関する事業、特に不動産投資を学ばせていただいたのです。ただ、先ほど申し上げたように海外の仕事への興味もありましたし、起業する上で自分に足りないスキルを補わなくてはいけないとも考えていました。そして、次に入ったプレースメント・エージェントの会社は、今振り返るとプレMBAのような存在でした。メンバー全員が海外経験者だったことから、刺激的な環境の中で個人スキルを磨くことができました。そしてイギリスでMBAを取得し、プライベートエクイティーのゲートキーパーとして世界最大級と言われているHamilton Laneに入社したのです。海外の会社で仕事をすることがキャリアの総仕上げとなり、そしてそれぞれの会社での貴重な経験が起業につながって現在があるのです。

 

Q:不動産業界、PE業界を経て、未経験のWeb業界で起業されたのはなぜですか?

 もともと業界にこだわりはありませんでした。日本では自分が携わってきた事業で独立する人が多いですが、自分は必ずしもそうする必要はないと思っていました。チャンスとアイデアさえあれば起業できると。そして「街コンジャパン」というポータルサイトを立ち上げ、その後、リンクバルを設立したのです。

 そもそものきっかけは、日本に帰国した2008年に遡ります。海外生活が長かった私は、東京でネットワークを作るためにさまざまなイベントやパーティーに参加していたのです。ただ、私が海外で経験したパーティーでのホスピタリティーが感じられなかったことから、自分で趣味の一環としてパーティーを開催するようになっていたのです。

 転機になったのは、2011年3月の東日本大震災です。当時、日本に元気がなく、ほとんどのイベントは自粛となっていました。「自分でも何かできることはないか」と思っていたところ、地方で開催されていた食べ歩き、飲み歩きをしながら交流するイベントの存在を知りました。こういう時だからこそ、何百人、何千人もの若者が集うイベントを全国に広めれば街が盛り上がり、日本が元気になるだろうと考えたのです。

 当時、地方10ヶ所位で開催されていましたが、「大規模合コン」「巨大コンパ」などネーミングが統一されておらず、ポータルサイトもないため情報が得づらい状況でした。そこで「街コン」とネーミングを統一し、開催状況がわかるポータルサイトとして2011年6月に「街コンジャパン」を立ち上げたのです。

 

Q:ポータルサイトの運営はもともとお考えだったのでしょうか。

 原点はオックスフォードのMBA時代です。MBAの授業で「起業家クラス」というものがあり、7~8人のチームを作り、アイデアを出してビジネスモデルを組み立て、うまくいけば起業もできるというユニークなクラスでした。そこで私は、不動産ポータルサイトというアイデアを出し、リーダーとしてチームを作りました。そして、不動産ポータルサイトを運用していたロンドンの会社に訪問したり、アメリカのスタートアップ企業の人の話を聞いたりと、ポータルサイトについてのリサーチを重ねた結果、ポータルサイトの凄さを実感しました。やがてイベント街コンに着目したときに、イベントを広めるためにはポータルサイトであると確信して「街コンジャパン」を立ち上げたのです。

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Q:「街コンジャパン」を立ち上げる上で、特に意識されたことはありますか?

 集客ですね。自分がイベントを主催した経験上、集客の難しさはイベント事業の課題になるだろうと考えていました。ポータルサイトがあれば参加者はいつ、どこでイベントが行われているのかわかりますし、主催者側も集客という最も難しい部分をクリアできます。「街コンジャパン」を通して参加者と主催者をマッチングすることで、全国に「街コン」が広げられるだろうと考えました。

 ただ、サイトの開設当時はイベント掲載数が非常に少なかったです。ポータルサイトを広めるためにも掲載数は重要ですので、イベント数を増やすために自らイベントを開催しました。人が開催しているものを掲載するのが通常のポータルサイトですが、自らサイトに掲載できるイベントを作ってしまったのです。

 

Q:御社が創業された2011年12月時点で、 すでに「街コンジャパン」が軌道に乗っていたということですね。

 そうですね。2011年10~11月に多くのメディアが一斉に街コンを取り上げ、中でもキー局がゴールデンタイムに放送してくれたことでユーザー数が一気に伸びました。直感的に「これはいける」と感じました。起業してからビジネスを始めるのが主流ですが、私の場合は見えないゴッドハンドのようなものに背中を押され、起業するべくして起業したという感じでした。

あとは、パナソニックさんやJALさんなどの有名企業からのタイアップのお話しを頂いたことも大きかったと思います。おかげでスタートアップにも関わらず信頼度、安心感が上がり、「街コンジャパン」の知名度も急上昇しました。

 

Q:その後もまさに順風満帆という印象です。成功を収めた要因は何だと思いますか?

 最大の要因は採用です。「街コン」が全国的に認知されポータルサイト「街コンジャパン」のユーザー数が伸びている以上、サイトの強化とイベント数を増やすことが重要です。先ほども申し上げた通り、当社はポータルサイトの運営や自社イベントの開催などを行っていますが、いずれにしても人がビジネスの中心ですので、採用を最重要視しています。

 1期目は創業メンバーも含めた少人数でやっていて、2期目から本格的に採用を始めたのですが専任もいない状態でした。そして3期目で採用担当者を置き、順調に採用ができるようになったのです。おかげさまで素晴らしいメンバーに恵まれ、現在は100人規模まで成長することができました。IMG_5962

Q:採用はどちらの会社も苦心されている部分ですが、御社の人材確保の決め手を伺いたいです。

 やはり面白い仕事、遣り甲斐のある仕事だからだと思います。世の中には数多くの仕事がありますが、お客様との距離が近く、喜ぶ顔を見ることができる遣り甲斐のある仕事というのは意外と少ないものです。また「街コン」のプランニングや、ポータルサイトの運用に面白さを感じた方も多かったのではないでしょうか。もう1つの理由は、「街コン」が認知されるのと同時に、リンクバルという名前も認知され始めたからだと思います。

 

Q:選考時に重視しているポイントはありますか?

 とにかく人柄です。いくらスキルがあっても、素晴らしい経歴があっても、人柄が良くなければ絶対に採用しません。そこを徹底しければより多くの人材を採用できたかもしれませんが、妥協は一切しませんでした。

 皆の憧れとなるような理想のコミュニティを作りたい。いいコミュニティを作るためには、そこで働く人達1人ひとりの意識の高さと人格が何よりも重要です。週5日間を共にするのであれば、いい仲間と働きたいですよね。ですから、採用の際にも「どういう人と働きたいかを考えてみましょう」と伝えています。

あと、会社は船のようなものだと思っています。皆が同じ船というコミュニティで航海をしていくわけです。リンクバルはいろいろな場所に行きたい船なので、どこまでも行ける船、理想的なコミュニティが必要だというのが私の考えです。

 

Q:順調に事業を拡大されていますが、挫折や苦労などはありませんでしたか?

 結論から言うとありません。「経験、それが人生」が私のモットーだからです。あらゆる事は偶然ではなく必然であり、いいことも悪いことも理由があって起こるものだと考えています。すべての経験は自分の成長のためにあると思っています。ですから、普通の人がつらいと思うことでも、私にとっては楽しいのです。だからこそ成長できているのだと思えば、それもいい経験です。成長の機会を得られたことに感謝し、楽しみながら経験を積ませていただいています。

 もともと楽観的な性格ではありましたが、アメリカ時代に更に拍車がかかりました。私は大学時代に哲学に興味を持ち勉強したのもそうですし、カリフォルニアという地が、自分と向き合うのに適した環境だったことも大きいと思います。勉強も含めていろいろなことが積み重なり、「経験、それが人生」という考え方に行き着きました。IMG_5914

Q:お話を伺っていて、「成長」が吉弘さんのキーワードではないかと感じています。

 はい、その通りです。理由の1つは、成長すればいろいろなものが見えるからです。かつての自分には見えなかったものや経験できなかったことが、成長することによって見えるようになり経験できるようになります。例えば、成長すれば上場を経験でき、上場すれば会社の新たなステージを経験することができます。そして成長を繰り返すたびに、見えるもの経験できるものが増えていく。せっかく人生を生きるなら、より多くのものを見たいですし経験したいですよね。

 もう1つは、少し現実的なお話です。新卒の説明会でもよく言うことですが、例えば世の中が50km/hの速さで動いているとしたら、それは川の流れと同じなのだと思っています。泳がなければ川下に流されますし、50km/hで泳いでも現状維持にしかなりません。成長というのは、50km/h以上で世の中という「川」を泳ぐことだと思います。成長するためには世の中を越えるしかない。会社のトップに立っている以上、そこは強く意識しています。

 

Q:今後の展望についてお聞かせください。

 横展開も含めて、よりビジネスを拡大したいです。最近も「グルメパス」というサービスを始めたところですが、「街コンジャパン」の会員数や集客力を活かし、会員ビジネスにも力を入れていきたいです。まずはイベント業界と属性や客層が近しいところから、徐々に手を広げていこうと考えています。将来的にはまったく違う仕事をしているかもしれませんが(笑)

 ただ、最終目標はあえて作らないようにしています。もちろん上場しているので中期計画などはありますが、最終的なゴールを決めると、天井を自分で作ってしまう気がするのです。例えば上場をゴールだと考えていたら、上場した時点で「もういいや」という感じになってしまいますよね。いいか悪いかは別として、私はゴールを設定しない方が楽しく走り続けられるのではないかと考えています。

 

Q:ありがとうございました。最後に、今後起業をめざしている読者に向けてメッセージをお願いいたします。

 起業したいという思いがあるなら、是非すべきです。私は、起業して本当に良かったと思っています。いくつかの会社で仕事をしてきましたが、起業してからは1年の濃さが今までの10倍、100倍です。とにかく会社ではいろいろなことが起こりますから、まさに「経験、それが人生」。毎日が楽しくて仕方がありません。

 1つアドバイスをさせていただくなら、年代を加味した仕事の仕方でしょうか。20代であればスピード感やアイデ力に優れているでしょうし、私のように40代で起業するのであれば経験や直感が大いに役立ちます。私は以前「直感はただの勘ではなく、全脳から来ているものだ」と聞いたことがあり、納得しました。それまでの経験や知識など、いろいろなものの積み重ねから発揮されるのでしょう。やはり20代と40代では経験値の差もありますから、年を重ねるほど直感が活かせるのではないかと。あとは個性や環境、能力などを加味し、自分にとっての最善策を選ぶことです。

 起業は、自分を成長させる絶好の機会です。ともに成長できるメンバーと素晴らしいコミュニティを作り、ぜひこの楽しさを味わってください。

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