『定年40歳』という新しい提案 
地盤ネット株式会社 代表取締役社長 山本 強

売上・昨対比163% 経常利益・昨対比190% 当期純利益・昨対比199%

地盤調査の革命的サービスともいえる「地盤セカンドオピニオン」の展開を機に、2012年12月、東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たした地盤ネット株式会社。代表取締役である山本強氏は、同社の飛躍的な成長において「社会貢献」がキーワードになったと語る。逆境こそチャンスであるという信念のもとに突き進み、成功をおさめた山本氏のビジョンとは?


 

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Q:山本様は「禍福は糾(あざな)える縄の如し」という言葉がお好きだそうですね。

 そうですね。逆境であればあるほど大きな見返りがあると考えていまして、その背景には自身の経験があります。というのも、高校2年生の夏休み明けにバイク事故で入院することになり、高校を留年してしまったんです。それまでは順調に育ってきていたので、どん底に落ちたような気分でした。そこで、何かで見返してやろうということで選んだのが関西学院大学の受験です。僕が通っていた高校では、現役で関関同立に合格した生徒がまだ1人もいなかったんですね。2年かけて一心不乱に勉強して、合格したときの周囲からの賞賛の嵐はものすごかったです。それまではバイクで事故に遭ったというイメージから、不良のレッテルを貼られていましたからね(笑)それが人生の教訓となり、起業の際の苦労も「頑張れば何とかなる」という一心で乗り越えることができました。

Q:起業の際にはどのような紆余曲折があったのですか?

 実は、最初の2年間は無給でした。いろいろなアイディアはありましたが、稼げるような事業を生み出せていなかったんです。稼げないということは世の中に貢献できていないということですから、当時は消費者のニーズに応えられていなかったんですね。その中で試行錯誤を重ね、誕生したのが「地盤セカンドオピニオン」という商材です。

 

Q:「地盤セカンドオピニオン」について詳しくお聞かせください。

 まず、地盤会社のメインの仕事は家や土地を買う際の地盤調査です。しかし、調査だけだと赤字になってしまうため、大半の会社は調査後の改良工事で利益を上げています。一般の方はあまり地盤について詳しくありませんから、「地盤が悪かったですよ」と言われると工事を頼んでしまうんですね。しかも、高額であるほどいい工事だと考えて、本当はやらなくてもいいような工事に費用をかけてしまうことがあるんです。ほとんどの地盤会社が工事ありきの運営をしている中、当社は逆に、調査と保証に力を入れて、無駄な工事をなくすための取り組みを始めました。それが「地盤セカンドオピニオン」です。
 「セカンドオピニオン」というと医療業界をイメージする方も多いかと思いますが、「地盤セカンドオピニオン」という言葉はまさにそこから生まれました。実は、僕の父が癌の手術をしたところ、それまでは元気だったのに急激に体力が落ちてしまったんです。よく考えてみると、地盤の調査と工事のように、お医者さんも検査だけするよりも手術をしたほうが儲かるんですよね。人間の身体と地盤はよく似ているんですよ。自分ではわからないから専門家の意見を参考にするしかないですし、地盤の場合はいい土壌であってもセメントなどで開発すると劣化してしまいます。念のためにやったことが価値を下げてしまい、1回解体するともう元の状態には戻せません。そういった共通点から、ちょうどその頃話題になっていた「セカンドオピニオン」という言葉を採用したんです。

 

Q:「地盤セカンドオピニオン」は具体的にはどのような成果を挙げたのでしょうか。

 先ほど申し上げたように、どれだけ稼げるかというのは世の中への貢献度合いによって決まります。「地盤セカンドオピニオン」によってユーザーの工事費用が累計200億円減ったのですが、当社の時価総額もその頃200億円に達していました。面白いことに、数値がピタッと合っているんです。社会にどれだけ貢献したかが周囲からの評価に繋がり、収入として返ってくるということですね。昨年の時点で時価総額は600億円まで伸びているので、資本金の300万円が2万倍になって返ってきています。高校生の頃に学んだ教訓が実を結んだ感じですね。

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Q:工事で収益を上げていた他社からの圧力はありませんでしたか?

 そこはスピードで乗り切りました。ほとんどの地盤会社を叩きに行くようなものですから、のんびりしていたら潰されてしまいます。ですから、「地盤セカンドオピニオン」を出してからは早めに上場して先手を打ったんです。生き残るための選択肢はそれしかありませんでしたね。
 あとは、最初の2年間は売れなかったというのも反発を受けなかった理由として大きいと思います。「地盤セカンドオピニオン」の構想自体は起業当時からあったんですが、完成するまで時間がかかったので他社からマークされなかったんです。最初から売れていたら今頃地盤の中にいたかもしれません(笑)

 

Q:優秀な人材が揃っていらっしゃる印象ですが、人材獲得のコツはありますか?

 キーワードは「社会正義」です。人間は、単純にお金が欲しいという考えから抜け出ると、社会に貢献したい、社会正義に携わりたいという思いが芽生えてきます。当社のビジョンはまさにそこに合致するんですね。業界の問題に立ち向かって消費者にメリットを与えるという、ある種王道のストーリーがあるんです。そういうストーリーには、優秀な人材が反応してくれるんですよ。

 

Q:社会貢献という理念があれば、自然と人がついてくるということですね。

 そうですね。それはスムーズに上場できた背景でもあると考えています。というのも、社会貢献しているビジネスは賛同してくださる方が非常に多いんですね。上場申請の際も審査において人が意見を戦わせるわけですから、社歴や業績よりも社会への貢献度が大きなウエイトを占めるのではないかと思います。「この会社が上場すれば世の中の不利益が減る」と言われると、なかなか反論できないですよね。逆に、例えば「このビジネスは子どもの教育にはあまり良くないかもしれない」と思われてしまうような事業をしていると審査に通るのは厳しくなります。社会貢献できる理念を持つのは企業にとって大切なことですね。

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Q:社内での「人」の問題についてはどのようにお考えでしょうか。

 過去には4倍、昨年は2倍というスピードで会社が急成長しているので、ついていくのが難しいという人が出てきています。会社の成長スピードが人間を上回ってしまうと、追いつける人とそうでない人のギャップが生じてしまうんですね。社内にはもう一つのギャップがあって、上場していると安定を求めて入社する人がいるんです。しかし、当社はもともとベンチャー企業ですから、上場前からいる人と上場後に入った人との間で隔たりができてしまったということもありました。
 管理というのは難しく、最初から人を厳しく管理してしまうと会社が成長できなくなってしまいます。しかし、ある時期から修正していかないとバランスが崩れてしまいますよね。やはり企業は人ですから、最近は人事や教育に投資して、人のケアに力を入れようとしているところです。人が辞めると他の社員にも影響しますし、お客さんにもマイナスのイメージを与えてしまうのでデメリットが非常に大きいんです。

 

Q:今後は人事に力を入れつつ、ビジネスをどのように展開させていきたいですか?

 災害に備えた土地選びですね。温暖化が進んでいく中で、大雨や地震などの自然災害は今後増えていくと思います。災害に弱い土地はたくさんありますが、不動産会社で売り出す際には恐らく地盤のジャッジはしていません。ですから、調査と保証というビジネスをやっている我々が、土地を選ぶ段階からアドバイスしていきたいと考えています。今我々がやっているのは既に決まった土地を調べて対策を練るということですから、それでは遅いことがあるんですね。広島の土砂災害や、浦安の液状化が起こった土地は、我々から見ると絶対に住んではいけないようなところです。災害はいずれ起きることですから、不動産業界とは違う立ち位置から我々がリスクヘッジのための提案をしていきたいですね。
もう一つは海外展開です。住宅レベルで災害に対する対策をしている国は日本くらいしかないので、技術が飛び抜けているんですね。この技術をフィリピンやインドネシア、中国などの災害が多い国に持ち込みたいと考えていて、現在もフィリピンに地盤調査の機械を輸出しようとしているところです。温暖化は世界的な現象ですから、物件を選ぶ際の判断基準として、地盤の評価というものを国内外で啓蒙していきたいです。あとは地盤のデータベースを生かして、いずれは不動産関係に革命を起こしたいとも考えています。

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Q:ありがとうございました。最後に、起業を考えている方々へのメッセージをお願いいたします。

 まず、40歳を起業のボーダーラインとして考えてみてください。私も40歳で起業したのですが、人生で言うと80歳のちょうど半分ですよね。サラリーマンという経験をするのもとても大切なことですが、40歳を過ぎてもずっと会社勤めをしているのはもったいないと思います。そこまで勤めていれば知識もそれなりに身についていますから、そこまで培ったものを世の中に出してみてはいかがでしょうか。もちろんアイディアがあれば若いうちに起業するのも素晴らしいことですが、起業するとサラリーマンを雇う側になりますから、その人達の気持ちをどれだけ理解できるかという点でも会社勤めの経験は非常に重要です。
 私は今、40歳からの独立を応援するために「フォーティースエンジェル」という団体を作ろうとしています。40歳だと子どももいて背負うものも大きく、失敗ができない時期ですよね。ですから、起業の仕方を学んだり研修を受けたりできるシステムを作り、優秀な人に投資をして成功のためのバックアップをしたいと考えています。
起業はとても面白いですし、起業をした人にしかわからない気持ち良さがあります。自分の会社を持つ、上場の良さを多くの方にお伝えしたいですね。勤める側を経験した人は、ぜひ雇う側にも立ってみてください。人生が180度変わるくらいのいい経験ができますよ。